ティカル

ティカル（Tikal）

ティカルは、グアテマラのペテン低地に位置する古典期マヤ文明の重要な都市であり、その栄光の時代は紀元4世紀から9世紀にかけて続きました。この地域は、今なお古代マヤの遺跡が数多く残されており、1979年にはその歴史的価値が認められ、世界遺産に登録されました。

歴史的背景

ティカルは元々「ムトゥル」と呼ばれており、その語源や意味は未だに解明されていませんが、ティカルという呼称は19世紀の観光客や猟師たちによって付けられたもので、「水たまりにて」という意味を持つユカテコ語に由来しています。この都市は、熱帯雨林の中で数世代にわたり発展し、最大時には約6万人の住民が暮らし、貿易の要所として機能していました。

紀元前800年頃から集落が形成され、1世紀には現在のような街並みに発展し、ピラミッドの建設が始まりました。マヤ王朝の初代君主はヤシュ・エーブ・ショークであり、彼にちなんだ歴史的な石碑が292年の日付を刻んでいます。378年にはテオティワカンの将軍シヤフ・カックによって征服され、新たな王朝が誕生しました。

繁栄と衰退

ティカルはその後、連続した王朝のもとで力をつけ、特にハサウ・チャン・カウィールが即位後の683年から再興が始まりました。この時期にはビッグ・テンペル（4号神殿）をはじめとする壮大な建築物が次々と完成しました。しかし、9世紀に入ると中央マヤの都市と同様に、ティカルも衰退の道を辿ります。

この衰退の原因は明確ではありませんが、過剰な農業開発による土地の劣化や気候変動などが影響していると考えられています。869年を最後に石碑の記録が途絶え、以降は50年から100年かけて街はほぼ放置されていくことになります。

現在の遺跡と生態系

今、ティカルの遺跡には壮大な神殿群が残されています。最も目立つのは高さ51メートルの1号神殿で、ジャガーの彫刻が見られることから「大ジャガーの神殿」とも呼ばれています。その他にも、ツイン・ピラミッドや多くの石碑が見られ、彼らが築き上げた文化の痕跡を強く感じさせます。

遺跡周辺はティカル国立公園として保護され、豊かな生態系を形成しています。さまざまな植生が見られるこの地域は、バイオダイバーシティが豊富で、ジャガーやピューマ、数々の鳥類が生息しています。この豊かな生態系は、マヤ文明の遺産とともに重要な保護対象となっています。

再発見の歴史

ティカルが再び注目を浴びることになったのは、1525年のことです。スペインの征服者エルナン・コルテスがこの地域を通過しましたが、記録には残されませんでした。1696年に修道士が巨石のピラミッドを発見したことで徐々に知られ始め、1881年にはさらに詳しい調査が行われ、ティカルの全貌が明らかになっていきました。

1955年以降には大規模な考古発掘が進められ、全体の一部を取り戻していきます。また、ティカルは映画『スター・ウォーズ』のロケ地としても有名で、その姿は多くの人々の記憶に残っています。今日、ティカルは古代マヤ文明の代表的な遺跡として、全世界から訪れる観光客を魅了しています。

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