エルナン・コルテス

エルナン・コルテス：アステカ帝国を征服した男

エルナン・コルテス（1485年 - 1547年）は、スペインのコンキスタドールであり、アステカ帝国を征服したことで歴史に名を刻みました。1992年から2002年まで発行されたスペインの1,000ペセタ紙幣に肖像が使用されていたことからも、その影響力の大きさが伺えます。

生涯

前半生

1485年、コルテスはスペインのエストレマドゥーラ地方メデジンで生まれました。彼は法律家を目指してサラマンカ大学に進学しますが、志を果たすことはできませんでした。新大陸への渡航計画もありましたが、怪我のため実現しませんでした。その後、彼は新大陸からの帰還者から話を聞き、見聞を広めました。

新大陸へ

1504年、コルテスはイスパニョーラ島に渡り植民者となりました。彼は統治者ニコラス・デ・オバンドからエンコミエンダ制の権益を与えられ、アスーア・デ・コンポステーラの町の公証人となりました。その後、彼は植民地での地位を確立し、不動産やインディアンの奴隷を獲得しました。

1511年、コルテスはディエゴ・ベラスケス・デ・クエリャルのキューバ征服に参加し、ベラスケスの秘書官となりました。キューバにおいて、彼はエンコミエンダ制による収益や鉱山、牧畜で生計を立て、指導力を高めました。

アステカ征服

1519年、コルテスはベラスケスの命令に違反してメキシコ湾岸沿いに進軍しました。彼はユカタン半島でヘロニモ・デ・アギラールとマリンチェに出会い、彼らを通訳兼案内人としてアステカへと向かいました。兵の逃亡を防ぐために船を沈め、ベラクルス市を建設すると、内陸へと進んでいきました。メキシコ高原に到達すると、アステカの宿敵であるトラスカラ人と同盟を結び、アステカへと向かいました。

当時、アステカ支配下の諸民族は過酷な税制に不満を抱いており、コルテス軍と同盟を結びました。スペインと諸民族の混成軍は膨大な数に上り、10月16日にはチョルーラの虐殺が起きました。アステカ王モクテスマ2世はコルテスを丁重に迎えましたが、後に立ち去るよう要求したため、コルテスはテノチティトランを離れました。

コルテスはキューバ総督追討軍を破り、再びテノチティトランに戻りましたが、ペドロ・デ・アルバラードたちが祭典中のアステカ人を虐殺し、反乱が起こりました。1520年6月29日、モクテスマ2世は殺害され、コルテスはテノチティトランを後にしました。この事件は「悲しき夜」と呼ばれ、多くのスペイン人が死亡しました。

テノチティトランを脱出したコルテス軍は、オトゥンバ谷でアステカ軍を破り、トラスカラで軍備を整えました。一方、アステカ人はクイトラワックを新王に選びましたが、天然痘が蔓延し、クイトラワックは死亡しました。その後、クアウテモックが王となり、スペイン軍に対抗しました。

1521年、コルテスは5万余の連合軍を率いてアステカに侵入し、テノチティトランを包囲しました。3カ月以上の攻防の末、8月13日にテノチティトランは陥落し、クアウテモックは捕らえられました。

征服後

アステカを征服すると、コルテスは征服地を部下に分け与え、自らも広大な土地を手に入れました。彼はカルロス1世から総督に任命され、カリフォルニア南部を探検しました。また、ホンジェラスやニカラグアへ遠征隊を派遣しました。1525年2月26日、コルテスはクアウテモックを絞首刑に処し、アステカは滅亡しました。

1529年、コルテスはバジェ・デ・オアハカ侯爵に封ぜられました。1530年にメキシコに戻り、富を築きました。1540年にスペインに帰国しましたが、総督への再任は却下されました。1547年12月2日、コルテスはセビーリャ近くで赤痢により死亡しました。遺体はメキシコシティのへスース病院内の礼拝堂に埋葬されました。

功罪と評価

コルテスはアステカ帝国を征服し、アステカ文明を粉砕しました。彼はインディオの社会が持っていた人身供犠などの側面をあげつらい、インディオの習慣を廃止させようとしました。征服先で黄金を略奪し、インディオの大量虐殺を行いました。しかし、コルテスの行為を肯定的に捉える見解もありました。

スペイン人による支配と搾取は、先住民の文化・伝統・宗教を徹底的に粉砕し、先住民を奴隷のように使役しました。インディオの反乱はメキシコ独立の原動力となりましたが、独立後のメキシコの実権を握ったのはコンキスタドールの子孫でした。インディオの社会的立場の向上は、20世紀になってようやく実現しました。

コルテスは、その功績と罪深さにおいて、複雑な評価を受ける人物です。彼の行動は、その後のメキシコの歴史に大きな影響を与えました。

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