ティコ第二星表

ティコ第二星表（Tycho-2 Catalogue）は、250万個を超える膨大な数の恒星に関するデータを含む、重要な天文星表です。

この星表には、具体的に2,539,913個の恒星について、その正確な位置、時間と共に天空を移動する固有運動、そして地球から見た見かけの明るさを示す視等級といった詳細な情報が収録されています。

星表の作成に用いられた恒星の位置や等級などのデータは、欧州宇宙機関（ESA）が運用した高精度天文観測衛星であるヒッパルコス衛星によって集められました。特に、ヒッパルコス衛星がその姿勢確認・制御のために使用した補助観測装置のデータが基となっています。

先行して作成されたティコ星表も同じくヒッパルコス衛星の補助観測データを用いていましたが、ティコ第二星表は、より進んだ高度な画像解析技術を適用し、さらに他の既存星表のデータも参照して再解析を行うことで、ティコ星表と比較して精度をわずかに向上させると同時に、収録している恒星の数を格段に増やしています。

星の位置精度は、星表全体の平均では約60ミリ秒角となっています。これは、ティコ星表の平均約25ミリ秒角と比較すると数値上は低いですが、ティコ第二星表が観測がより困難な暗い星まで幅広く収録していることに起因します。しかし、9等級より明るい比較的明るい星に限れば、7ミリ秒角という高い精度を実現しており、これはティコ星表と同等かそれ以上の精度です。また、特に暗い星については、ティコ星表よりも高精度で位置が決定されています。

固有運動の精度については、天体図（AC2000版）や、ヒッパルコス天球座標系に整合させた143種類の地上観測に基づく星表との詳細な比較解析によって検証され、年あたり2.5ミリ秒角という高い精度が確認されています。ただし、約10万個の星については、十分なデータが得られず固有運動を算出できませんでした。基となった観測データは、1989.85年から1993.21年までの期間（平均 epoch は1991.5年）に取得されたものです。

視等級の精度は、9等星よりも明るい星では0.013等という非常に高い精度が得られていますが、星表全体の平均としては約0.10等となっています。

重星の扱いについても改善が見られます。重星については基本的に個々の星が分離して掲載されており、特に間隔が0.8秒角以上離れている場合は、それぞれの星の情報が個別に収録されています。これは、ティコ星表が2秒角以上の間隔を持つ重星のみを個別に扱っていたのと比較すると、より多くの近接した重星を分離してデータを提供していることを意味します。

ティコ第二星表が登場する以前には、米海軍天文台がティコ星表と天体図（AC 2000）を組み合わせて編纂したACT参照星表（Astrographic Catalog/Tycho、略称ACT）が利用されていました。ACT参照星表には百万個近い星が収録され、ティコ星表とAC 2000の観測時期の隔たりを利用して、ティコ星表単体よりも固有運動の精度を約10倍向上させていました。しかし、250万個を超える膨大な数の星を収録し、より広範な精度情報を持つティコ第二星表が公開されたことで、現在では多くの場面でティコ第二星表がACT参照星表の役割を実質的に引き継いでいます。

この星表に収録されている各恒星には、特定の星を素早く検索できるよう、ガイド星領域番号と領域内の5桁の星番号が付与されています。データは、番号や領域を指定してリストを取得できる`sty2`ツールや、画像形式（IRAまたはFITS形式）でリストを提供する`imty2`ツールなど、いくつかの方法を用いて利用可能です。

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