ティレル・ロマックス

ティレル・ロマックス（Tyrel Lomax）

概要

ティレル・ロマックスは、1996年3月16日にオーストラリアの首都キャンベラで生まれたプロラグビーユニオン選手である。彼の主たるポジションはフォワード最前列のプロップであり、現在はスーパーラグビー・パシフィックに所属するニュージーランドのチーム、ハリケーンズでプレーしている。力強いスクラムとフィジカルコンタクトを最大の武器とする現代的なプロップとして知られる。

経歴

ラグビーは彼の家族にとって非常に身近な存在であった。父親のジョン氏、そしていとこのデイヴィット氏も、共にプロフェッショナルなラグビーリーグ選手として活躍した経験を持つ。このような環境は、幼少期から彼が自然とラグビーに親しみ、その道を志すきっかけとなったと推測される。

プロップというポジションにおいて、体格は極めて重要な要素となるが、ロマックスはその点でも恵まれている。身長192cm、体重127kgという強靭で頑丈なフィジカルは、スクラムワークにおける推進力、ブレイクダウンでの仕事、そしてボールキャリーやタックルといったあらゆる局面で彼の大きな強みとなっている。

彼のシニアイヤーのキャリアは、出身地であるオーストラリア国内から始まった。キャンベラ・ヴァイキングズやメルボルン・ライジングといったセミプロフェッショナルレベルのチームで実戦経験を積み、スーパーラグビーに参入するメルボルン・レベルズでもプレー機会を得た。その後、活躍の場をニュージーランドに移し、国内最高峰の地方選手権であるマイター10カップ（現ニュージーランド州代表選手権）のタスマンに加入した。ここでの安定したパフォーマンスが認められ、ニュージーランドのスーパーラグビーチームであるハイランダーズへ移籍。そして、2019シーズンからは現在の所属チームであるハリケーンズに移籍し、チームの主軸プロップとして欠かせない存在となった。オーストラリアとニュージーランド、双方のラグビー環境で培われた多様な経験は、彼を多角的に成長させ、現在の完成されたプロップへと導いた。

国際舞台においても、ロマックスはその才能を発揮している。キャリアの初期段階では、U20オーストラリア代表に選出され、世代別の国際大会を経験した。ニュージーランドへの移籍後、マオリの血を引く選手として、権威あるマオリ・オールブラックスにも選ばれ、文化的な背景を持つ特別なチームでのプレーを経験した。そして、世界のラグビー選手にとって最高の栄誉とされるニュージーランド代表、オールブラックスとしてもプレーする機会を得た。2022年10月時点で、彼は既に20キャップを獲得しており、これは彼がオールブラックスの重要な一員として継続的に信頼されている証である。さらに、ラグビー界最大のイベントであるラグビーワールドカップ2023のニュージーランド代表スコッドにも選出され、フランスで開催されたこの大会で世界の強豪国を相手に自身のプレーを披露した。ワールドカップという最高の舞台での経験は、彼の国際キャリアにおける大きなハイライトとなったことは間違いない。

プレースタイルと貢献

プロップはラグビーのフォワードにおいて、スクラムの安定化という最も基礎的かつ重要な役割を担うポジションである。ロマックスは、その圧倒的な体格と高いスクラム技術をもって、相手フロントローにプレッシャーをかけ、自チームに有利なスクラム状況を作り出すことに貢献する。これにより、バックス陣に攻撃の機会を与えることができる。また、彼はセットプレーだけでなく、オープンプレーにおいても存在感を示すことができるプロップである。密集からの力強いボールキャリーは相手ディフェンスラインを突破する可能性を秘めており、ショートレンジでのゲインゲッターとして機能する。ディフェンス面でも、彼のパワフルなタックルは相手チームの攻撃を寸断する効果を持つ。ハリケーンズやオールブラックスといったハイレベルなチームにおいて、ロマックスはフォワードパックの屋台骨として、チームにフィジカルな基盤と推進力をもたらしている。

今後の展望

ティレル・ロマックスは、プロップとして最も脂が乗る時期を迎えつつあり、今後もハリケーンズそしてオールブラックスの主要メンバーとして活躍が期待される。プロップは経験が重要視されるポジションであり、これまでのスーパーラグビーやテストマッチでの豊富な経験を活かし、さらにチームを牽引するリーダー的な存在へと成長していく可能性がある。彼の力強いプレーは、これからも多くのラグビーファンを魅了し続けるだろう。

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