ティン・マシーン (アルバム)

『ティン・マシーン』 (Tin Machine)

この作品は、イギリスのロックバンド「ティン・マシーン」によって1989年に発表された、彼らのキャリアにおける最初のスタジオアルバムです。長らくソロアーティストとして活動してきたデヴィッド・ボウイが、ギタリストのリーヴス・ガブレルス、そしてドラマーのハント・セイルスとベーシストのトニー・セイルスというリズム隊の兄弟と共に、新たなバンド形態で音楽を追求することを決意し、その成果として誕生しました。オリジナル盤は1989年6月21日にEMIレコードから世界に送り出されました。

ボウイ自身が「バンドの一員として、エゴを抑え、純粋なサウンドを追求する」という意向のもと制作されたとされるこのアルバムは、従来の彼の作品とは一線を画す、粗削りで力強いロックサウンドを特徴としています。メンバーそれぞれが対等な立場で音楽に関わるという姿勢が、楽曲の随所に反映されていると言えるでしょう。レコーディングには、コアメンバーに加え、サポートミュージシャンとしてケヴィン・アームストロングがギターとハモンドオルガンで参加し、サウンドに厚みを加えています。

収録曲

アルバムには以下の多様な楽曲が収められています。作曲者名が併記されていない曲は、デヴィッド・ボウイ単独での作曲によるものです。

1. 「ヘブンズ・イン・ヒア」 - "Heaven's In Here" (6:07)
2. 「ティン・マシーン」 - "Tin Machine" (Bowie, Gabrels, Sales, Sales) (3:36)
3. 「プリズナー・オブ・ラブ」 - "Prisoner Of Love" (Bowie, Gabrels, Sales, Sales) (4:51)
4. 「クラック・シティ」 - "Crack City" (4:36)
5. 「アイ・キャント・リード」 - "I Can't Read" (Bowie, Gabrels) (4:53)
6. 「アンダー・ザ・ゴッド」 - "Under The God" (4:07)
7. 「アメイジング」 - "Amazing" (Bowie, Gabrels) (3:06)
8. 「ワーキング・クラス・ヒーロー」 - "Working Class Hero" (ジョン・レノン) (4:42) - この曲は、ジョン・レノンが作詞・作曲した楽曲のカバーです。
9. 「バス・ストップ」 - "Bus Stop" (Bowie, Gabrels) (1:42)
10. 「プリティ・シング」 - "Pretty Thing" (4:39)
11. 「ビデオ・クライム」 - "Video Crime" (Bowie, Sales, Sales) (3:54)
12. 「ラン」 - "Run" (Armstrong, Bowie) (3:19)
13. 「サクリファイス・ユアセルフ」 - "Sacrifice Yourself" (Bowie, Sales, Sales) (2:11)
14. 「ベイビー・キャン・ダンス」 - "Baby Can Dance" (4:57)

これらの楽曲は、ティン・マシーンというバンドが追求した、飾り気の少ない直接的なロックサウンドを体現しています。特に、ガブレルスの鋭いギターワークとセイルス兄弟の強固なリズムセクションは、ボウイのボーカルと共にアルバム全体の基盤を形成しています。

再リリース盤

1995年には、ヴァージン・レコードからこのアルバムの再発売が行われました。この際、オリジナル盤には未収録だったボーナストラックが1曲追加されました。追加されたのは、「バス・ストップ」のライブ・バージョンです。

ボーナストラック（1995年 ヴァージン・レコード盤）
「バス・ストップ (ライヴ・カントリー・ヴァージョン)」 - "Bus Stop" (Live Country Version) (Bowie, Gabrels) (1:59)

参加ミュージシャン

このアルバムのレコーディングに参加した主なメンバーとサポートミュージシャンは以下の通りです。

デヴィッド・ボウイ: ボーカル、ギター
リーヴス・ガブレルス: リードギター
トニー・セイルス: ベース、ボーカル
ハント・セイルス: ドラムス、ボーカル
サポートメンバー:
ケヴィン・アームストロング: ギター、ハモンドオルガン

アルバムの意義

『ティン・マシーン』は、デヴィッド・ボウイが自身のキャリアにおいて新たな音楽的探求を試みた時代の始まりを告げる作品です。ソロアーティストとしての巨大な名声から一旦距離を置き、バンドという集合体の中での創造性を模索した彼の姿勢が表れています。当時の音楽シーンにおける評価は様々でしたが、後のボウイのキャリアを振り返る上で、この時期の活動は重要な位置を占めています。このアルバムは、特定の音楽ジャンルに縛られることなく、純粋なロックンロールのエネルギーを放出することに焦点を当てた、実験的かつ意欲的な記録と言えるでしょう。

もう一度検索