ティート・スキーパ

ラッファエーレ・アッティーリオ・アメデーオ・スキーパ

ラッファエーレ・アッティーリオ・アメデーオ・“ティート”・スキーパ（Raffaele Attilio Amadeo "Tito" Schipa, 1889年1月2日 - 1965年12月16日）は、20世紀前半に活躍したイタリアのテノール歌手です。その軽妙で甘美な歌声から「テノーレ・ディ・グラツィア」（軽妙な声のテノール）として、世界中で人気を博しました。

生涯

スキーパは、イタリア最貧困地域であったレッチェの貧しい家庭に生まれました。出生届には1889年1月2日とありますが、これは父親が兵役を逃れるための策略だったと言われ、実際には1888年12月生まれと考えられています。幼い頃から教会の聖歌隊でその美声を披露し、19歳の時に音楽教師に見出され、ミラノで声楽を学ぶ機会を得ました。

1909年2月、20歳になったばかりの頃、ヴェルチェッリの劇場でヴェルディの『ラ・トラヴィアータ』アルフレード役でデビュー。当初は評価を得られませんでしたが、地方劇場を巡業するうちに、『リゴレット』マントヴァ公爵役や『ラ・ボエーム』ロドルフォ役など、リリカルな役柄でレパートリーを増やしていきました。1911年には、マスネの『ウェルテル』タイトルロールでローマでの公演が大成功を収め、トスカニーニなどの著名な指揮者から声がかかるようになります。このウェルテル役は、スキーパの生涯を通じての当たり役となりました。

1913年からは、ブエノスアイレス・コロン劇場をはじめとする南米の劇場でも活躍し、1915年にはミラノ・スカラ座にもデビューを果たします。1917年には、プッチーニの『つばめ』モンテカルロでの世界初演で、ルッジェーロ役を演じました。

スキーパの名声を決定的なものにしたのは、1919年から1932年までのシカゴ・リリック劇場との長期契約、そしてニューヨーク・メトロポリタン歌劇場（メト）への客演でした。アメリカで最も高額なギャラを得るオペラ歌手となり、豪華な邸宅での華やかなパーティーや、数々の女性との交際も注目を集めました。世界恐慌による給与カットで、ライバルのベニャミーノ・ジーリやジャコモ・ラウリ＝ヴォルピがイタリアに帰国した後も、スキーパはメトに留まり、イタリア人テノール歌手の穴を埋めるようにその存在感を増大させていきました。アメリカでは、商業録音や映画出演も行っています。

1930年代末にイタリアへ帰国。ムッソリーニ率いるファシスト党政権に共鳴したスキーパは、ファシストのプロパガンダに協力し、独伊枢軸の文化的象徴としてドイツの劇場にも出演しました。しかし、ファシスト政権崩壊後は、その行動が批判され、活動は停滞しました。1947年にはニューヨークのカーネギー・ホールでリサイタルを開きましたが、客席は半分ほどしか埋まらなかったと言われています。

大戦中の行為が人々の記憶から薄れ始めた1950年代から60年代にかけて、スキーパはリサイタルを中心に活動を再開。1962年には73歳にしてアメリカ・ツアーを成功させました。1965年、ニューヨークで死去。

スキーパは、声量や声域に恵まれていたわけではありません。そのため、レパートリーはレッジェーロの役柄に限定されていました。しかし、明瞭な口跡、確かなディクション、そして全音域にわたってムラのない発声が、彼を代表的なテノーレ・ディ・グラツィアたらしめました。また、作曲家としても才能を発揮し、オペレッタ『リアナの王女』や歌曲も成功を収めています。

TitoSchipa.it

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