ティーポット・ドーム事件

ティーポット・ドーム事件

ティーポット・ドーム事件（Teapot Dome scandal）は、1921年から1924年にかけてアメリカ合衆国のハーディング大統領政権下で発生した政治的スキャンダルの一つです。この事件は、内務長官アルバート・B・フォールが海軍の油田を不正に民間企業に賃貸したことで引き起こされ、後に深刻な汚職問題として国民の注目を集めることになりました。

背景

20世紀初頭、アメリカ海軍は燃料供給の転換を行い、石炭から石油へと移行しました。このため、海軍は石油資源を確保する必要があり、ウィリアム・タフト大統領政権の頃から複数の油田を国有としていました。1921年に、ハーディング大統領は大統領命令を出し、ワイオミング州のティーポット・ドーム油田やカリフォルニア州のエルク・ヒルズ油田の管理を海軍省から内務省に移しました。

この動きは、フォールが海軍長官エドウィン・デンビを説得して実行に移されました。ところが、フォールは後に、これらの油田の権利を入札なしで石油会社へ賃貸することになります。

汚職の発覚

1922年、フォールはティーポット・ドーム油田をシンクレア石油の関連会社、マンモス石油に賃貸し、エルク・ヒルズ油田をパン・アメリカン・石油に貸しました。これらの賃貸自体は法律的には問題ありませんでしたが、フォールはそれらの賃貸契約に対して多大な利益を得ていました。特に、フォール自身がドヒニーからの無利子融資や賃貸契約に関する資金を受け取っていたことが後に問題視されました。

1922年4月、ワイオミング州の石油技師がシンクレアとの取引に疑念を抱き、上院議員に告発したことがきっかけで調査が開始されました。調査は年をまたぎ、モンタナ州の上院議員トマス・J・ウォルシュが主導しました。調査が進む中、フォールの証拠隠蔽が明らかになり、合法的に見えた賃貸契約には違法性が潜んでいることが徐々に明らかになってきました。

結果と影響

1924年、フォールは収賄罪で逮捕され、議会は彼の行動を裁くための司法手続きを進めました。1927年には連邦最高裁が油田の賃貸契約が違法であるとの判決を下し、いずれの油田も海軍に返還されました。フォールは贈賄の件で有罪となり、長年の政界キャリアが失われました。

この事件は、アメリカの政治史上、ウォーターゲート事件の前では最も重大な汚職事件とされ、政権への信頼を大きく揺るがしました。また、議会の調査権の強化という重要な教訓をもたらし、以後の政治制度に影響を与えました。9515年、アメリカ合衆国エネルギー省はティーポット・ドーム油田を売却し、2200万バレルの石油を生産したことから、スキャンダルの影響は現在に至るまで続いています。

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