テオダハド

テオダハド：悲劇の東ゴート王

テオダハド（480年? - 536年）は、東ゴート王国の第4代国王として知られています。彼は、テオドリック大王の甥であり、アマラスンタの共同統治者として指名されましたが、後に彼女を幽閉し、王位を奪いました。しかし、この行動が東ローマ帝国の介入を招き、彼の治世は悲劇的な結末を迎えることになります。

生涯

テオダハドは、アマル家の血を引いていました。彼は、トスカーナ地方を領地としていたため、「トゥーシア公」とも呼ばれていました。しかし、彼は優柔不断な性格で、危機に際しては逃亡を試みるなど、指導者としての資質に欠けていました。テオドリック大王からも嫌われ、告発により法廷に立たされたこともありました。

テオドリックの死後、テオダハドは反アマラスンタ派の首領となり、彼女に圧力をかけました。しかし、アマラスンタは反対派の将軍を暗殺し、勢力を削ぎました。534年、テオダハドは共同統治者に指名されましたが、実権はアマラスンタに握られたままでした。同年、テオダハドは反乱を起こし、アマラスンタを追放して王位を奪取しました。彼女は幽閉後、暗殺されましたが、この事件は東ローマ帝国のユスティニアヌス帝にイタリア半島奪回の口実を与えることになります。

東ローマ帝国との対立と最期

アマラスンタ暗殺を口実に、東ローマ帝国は将軍ベリサリウス率いる艦隊をシチリア島に派遣し、これを陥落させました。テオダハドは事態の沈静化を図ろうとしましたが、カルタゴでの反乱やゴート軍の敗北により、東ローマ帝国との対決姿勢を強めました。しかし、東ローマ帝国はダルマティアを奪還し、ベリサリウスはイタリア半島を北上し、ナポリを征服しました。

追い詰められたテオダハドは、ゴート族の集結するローマへ向かいましたが、煮え切らない態度に業を煮やしたゴート族は彼に退位を要求しました。ラヴェンナへ逃亡する途中、彼は後継者に任命された将軍ウィティギスの命を受けた刺客によって暗殺されました。

テオダハドの治世は短く、東ゴート王国の衰退を加速させる一因となりました。彼の優柔不断さと政治的失策は、王国を危機に陥れ、最終的には東ローマ帝国の侵略を招くことになったのです。

参考文献

Herwig Wolfram & Thomas J. Dunlap『History of the Goths』（University of California Press、1990年） ISBN 0520069838
Peter Heather『The Goths』（Blackwell Publishers、1998年） ISBN 0631209328
* 松谷健二『東ゴート興亡史 東西ローマのはざまにて』（中公文庫、2003年） ISBN 4122041996

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