テキサス教科書倉庫

テキサス教科書倉庫（現ダラス郡管理棟）

テキサス教科書倉庫として歴史にその名を刻むこの建物は、現在はダラス郡管理棟として利用されています。テキサス州ダラスのディーリー・プラザに面した場所に位置するこの7階建ての建物は、1963年11月22日、アメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディが暗殺された痛ましい事件の現場となったことで知られています。当時の倉庫従業員であったリー・ハーヴェイ・オズワルドが、この建物の6階南東角から大統領の車列に向けて銃を発砲したとされています。大統領は銃撃から約30分後、パークランド記念病院で息を引き取りました。

この建物は、テキサス州の歴史建造物として記録されており、ダラスのダウンタウン、ウエスト・エンド地区、エルム通りとノース・ヒューストン通りの南東角、エルム通り411番地に所在しています。

建物の歴史

この土地は元々、ジョン・ニーリー・ブライアンの所有地でした。1880年代にはワゴンショップが営まれていましたが、1894年にthe Rock Island Plow Companyが買収し、1898年には5階建ての建物を建設しました。しかし、1901年に落雷により建物はほぼ全焼してしまいます。翌1902年、建物は商業用のロマネスク・リヴァイヴァル様式で再建され、この時7階建てに拡張されました。

その後、所有者は変遷し、1937年にはthe Carraway Byrd Corporationが取得しますが、ローンの債務不履行により1939年7月4日に公売に付され、デイビット・ハロルド・バードが落札しました。バード氏の所有下では、1940年まで空き家でしたが、食料品卸売業者のジョン・セクストン＆カンパニーがリース契約を結び、南西部への販売・流通拠点として利用しました。地元では「セクストンビル」と呼ばれていましたが、1961年11月に同社が移転した後、建物は改修され、内部の間仕切り、カーペット、空調設備、低層階への乗用エレベーターが追加されました。

ケネディ大統領暗殺事件との関連

1963年の事件当時、この建物はテキサス教科書倉庫社が教科書や関連用品の倉庫、受注処理センターとして使用していました。上層階は以前のテナントによる油害があったため、同社は書籍を保護するために合板で床を覆う作業を行っていました。この作業は、大統領の車列が通過する直前、6階の西側で始まりましたが、見通しを確保するため、在庫は東側の壁際に移動され、普段よりも高く積み上げられた状態でした。1963年11月22日、この倉庫で一時的に勤務していたリー・ハーヴェイ・オズワルドが、この6階の窓から大統領の車列に向けて合計3発の銃弾を発射しました。

なお、テキサス教科書倉庫社は、主要な建物から数ブロック離れた場所にも別の建物を所有していました。ヒューストン通り1917番地にあったその小規模な4階建ての建物は、パレードルートから少し離れていました。オズワルドの当時の上司であったロイ・トゥルーイは、ウォーレン委員会での証言で、オズワルドを別の建物に配属させる選択肢があったと述べています。彼は、オズワルドと同僚が同じ日に勤務を開始し、どちらか一人を主要な倉庫に配属させる必要があったため、オズワルドを選んだと説明しています。この別の建物は、後にウッドオール・ロジャース・フリーウェイ建設のために取り壊されました。

事件後の変遷と現在の利用

ケネディ大統領暗殺という悲劇の後、当時のダラス市長ウェス・ワイズは、暗殺事件の影からダラスを立ち直らせると同時に、この歴史的な建物を差し迫った取り壊しから守り、事件の検証のため保存することを重視しました。

テキサス教科書倉庫社が1970年に移転した後、所有者のデイビット・ハロルド・バード氏は建物を音楽プロデューサーのオーブリー・メイヒューに売却しましたが、所有権は1972年にバード氏に戻りました。そして1977年、ダラス郡政府が建物を購入しました。建物下部の5階層は郡政府の事務所として使用するために改装され、1981年3月29日にダラス郡管理棟として新たに開所しました。

1987年2月、大統領の日に合わせて、事件現場となった6階部分が「シックスフロア博物館」として一般公開されました。ここでは暗殺事件に関する展示が行われています。さらに2002年2月18日の大統領の日には、7階のギャラリーも開館しました。250万ドルをかけたこの改装により、7階の倉庫スペースは博物館ギャラリーへと生まれ変わり、「ピューリッツァー賞の写真」展などが開催されています。アンディ・ウォーホルの作品を含む他の展示もこのギャラリーで行われています。

2010年5月4日には、シックスフロア博物館に押し込み強盗が侵入し、金庫を盗み出そうとする事件が発生しましたが、警備員に見つかり、金庫は未開封のまま放置され犯人は逃走しました。

現在、この建物は歴史的な場所として、そして郡の行政機関として、ダラスの街に存在し続けています。

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