テグルン

テグルン（生没年不詳）は、モンゴル帝国第五代皇帝、セチェン・カアン、即ちクビライ・カアンの皇后（ハトゥン）です。漢文史料である『元史』などには「帖古倫(tiègŭlún)大皇后」と記されていますが、ペルシア語史料である『集史』にはその名を見出すことができません。

概要

『元史』巻106表1后妃表によれば、テグルンはクビライの「大オルド(斡耳朶)」の主であったとされています。しかし、彼女の事績に関する記録は極めて乏しく、詳しい生涯は不明です。

興味深いことに、『集史』の「メルキト部族志」には、チンギス・カンの時代にウドイト・メルキトの王であったトクタ・ベキとその兄弟クドゥ、そしてクドゥの娘トルカイチンに関する記述があります。トルカイチンは13歳の時にクビライ・カアンに求められ、全てのカトンに先立って娶られたものの、子がなかったために他のカトンよりも地位が低かったとされています。

このトルカイチンとテグルンを同一人物と見なす説が存在します。しかし、宇野伸浩は、地位が低かったトルカイチンと「大オルド」の大皇后であったテグルンを同一視することの不自然さを指摘し、この説を否定しています。

いずれにせよ、クビライがテグルンを娶ったのは彼が13歳になった以降のことであると考えられています。史料の少なさから、テグルンの生涯は多くの謎に包まれていますが、クビライの皇后の一人として、モンゴル帝国の歴史に名を残しています。

参考文献

宇野伸浩「チンギス・カン家の通婚関係の変遷」『東洋史研究』52号、1993年
宇野伸浩「チンギス・カン家の通婚関係に見られる対称的婚姻縁組」『国立民族学博物館研究報告』別冊 20、 1999年

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