テスラ・モデルX

テスラ・モデルX（Model X）

テスラが展開するモデルXは、アメリカの自動車メーカーが手がけるクロスオーバーSUV型の電気自動車です。この車両は、テスラのフラッグシップモデルであるモデルSの電気駆動システムとプラットフォームを基にして開発されました。2012年にはジュネーブモーターショーで初めてその姿を披露し、同年から予約の受付を開始しました。正式な顧客への引き渡しは、2015年9月29日から始まりました。

モデルXにはフロントとリアに2つのモーターが搭載されており、それぞれ異なる性能のバリエーションが提供されています。フロントモーターにはインダクションと永久磁石の2種類があり、リアモーターには標準とハイパフォーマンスのオプションがあります。さらに、モデルXには可変式のリアスポイラーも搭載されており、空気抵抗係数（Cd値）は驚異の0.25という低さを誇ります。

このSUVは一定の車高を有しながらも、バッテリーをフロア下に配置することで重心が低く設定されています。エンジンやトランスミッションが存在しないため、ドライブトレインによるスペースの占有が少なく、フロアトンネルもありません。ボンネット下にはラゲッジルームが確保されており、収納力にも優れています。また、モデルXの特徴的なデザイン要素として注目されるのが「ファルコンウィングドア」です。この特殊なガルウィング式のドアは、後部座席へのアクセスをスムーズにするために採用されました。ユニークなダブルヒンジシステムにより、他のガルウィングドアとは異なる動きを見せ、周囲の状況を把握するセンサーを備えているため、狭いスペースでも開閉が可能です。

標準で2列シートの5人乗りとして設計されているモデルXですが、オプションを利用することで最大7名まで座れる3列シートに拡張できます。すべてのモデルには「オートパイロット」と呼ばれる運転支援システムが搭載されており、Wi-Fi経由でのソフトウェアアップデートにより機能が追加されたり改善されたりします。ただし、このオートパイロットは米国運輸省道路交通安全局（NHTSA）が定義する自動運転レベルではレベル2に該当し、自動的にハンドル操作や加速、ブレーキを行う機能が制限されています。

2022年には、パワーステアリングシステムに関する不具合が報告され、米国においてリコール措置が取られることになりました。対象となったのは2017年から2022年に製造された車両で、ソフトウェアの改修が計画されています。

モデルXは安全性能においても高い評価を受けており、2017年にNHTSAによる衝突試験で全ての評価項目で5つ星を獲得しました。さらに、2019年モデルもユーロNCAPでの試験において同様に5つ星評価となっています。しかし、2020年に発表された国家運輸安全委員会の調査では、2017年と2018年に発生した死亡事故に関する報告がありました。特に2017年の事故では、オートパイロットが作動した矢先にトレーラーに衝突し、運転手が亡くなるという痛ましい結果に至りました。2018年の事故でもモデルXの運転手がオートパイロットの誤作動を家族に話していたことが報告されています。

このように、テスラ・モデルXは先進的な技術や安全性が評価されている一方で、運転支援システムにはさらなる改善が求められているという複雑な側面を持っています。

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