テトラクロロアルミン酸カドミウム(I)

テトラクロロアルミン酸[カドミウム]：希少なカドミウム-カドミウム結合を持つ化合物

テトラクロロアルミン酸[カドミウム]は、化学式Cd₂(AlCl₄)₂で表される無機化合物です。この化合物の特筆すべき点は、カドミウムが+1の酸化状態をとっていること、そして何よりも、カドミウム原子同士が結合したCd-Cd結合を持つ初めての化合物として1961年に報告された点にあります。このCd-Cd結合の存在は、カドミウム化学において特異な例であり、多くの研究者の関心を集めてきました。

合成と構造

テトラクロロアルミン酸[カドミウム]は、溶融した塩化[カドミウム]に金属[カドミウム]を溶解させ、さらに[塩化アルミニウム]を加えることで合成されます。この合成過程は、以下の二段階の反応式で表すことができます。

段階1: CdCl₂ + Cd → Cd₂Cl₂

段階2: Cd₂Cl₂ + 2 AlCl₃ → Cd₂(AlCl₄)₂

最初の段階では、塩化[カドミウム]]と金属カドミウムから、二価のカドミウムを含む中間体が生成します。そして、この中間体に塩化アルミニウムを加えることで、最終的にテトラクロロアルミン酸[[カドミウム]が得られます。

Cd-Cd結合の存在は、当初、ラマン分光法による研究で示唆されました。その後、独立して行われた二つの[単結晶]]X線構造解析によって、その存在が明確に確認されました。Cd-Cd結合の長さは、報告によってわずかに異なり、257.6 pmまたは256.1 pmとされています。この結合は、エタン様のCd₂Cl₆ユニットの一部を形成しており、このユニットはAlCl₄ユニットと頂点を共有する構造をとっています。この構造は、[[水銀]化合物、例えば塩化[水銀]に見られるHg₂²⁺イオンと類似性が見られます。

物理的および化学的性質

テトラクロロアルミン酸[カドミウム]は、反磁性であることが知られています。これは、化合物中に不対電子が存在しないことを意味します。しかし、この化合物は非常に反応性が高く、特に水とは容易に反応します。水との反応では、不均化反応が起こり、金属カドミウムとカドミウムイオン(Cd²⁺)が生成されます。この反応性は、その特異な構造と関係していると考えられています。

まとめ

テトラクロロアルミン酸[カドミウム]は、その珍しいCd-Cd結合を持つ化合物として、無機化学において重要な研究対象となっています。その合成法、特異な構造、高い反応性など、興味深い性質を持つこの化合物は、カドミウムの化学的性質を理解する上で、重要な役割を果たしています。今後の研究によって、さらに多くの知見が得られることが期待されます。

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