カドミウム

カドミウムとは

カドミウム（英: cadmium）は、原子番号48を持つ金属元素であり、化学記号は Cd です。亜鉛族に属し、その性質は亜鉛に似ています。カドミウムは主に亜鉛鉱石から副産物として得られるため、亜鉛の精製とともに常に取り扱われています。しかし、この金属は健康に対する有害性が知られ、特に腎臓機能に悪影響を及ぼすことが懸念されています。このため、カドミウムの管理には慎重を要します。日本では、富山県の神通川流域で発生したイタイイタイ病が有名であり、これはカドミウムによる環境汚染が原因とされています。さらに、世界保健機関（WHO）傘下の国際がん研究機関（IARC）は、カドミウムが発がん性物質であることを指摘しています。

歴史

カドミウムは1817年にドイツのフリードリヒ・シュトロマイヤーによって、菱亜鉛鉱から発見されました。同じ年に、カール・ザムエル・ヘルマンも酸化亜鉛から発見しています。カドミウムの名称は、フェニキアの伝説上の人物「カドモス」や、ギリシャ語の「カドメイア（菱亜鉛鉱を意味する）」が由来とされる説があります。

性質

カドミウムは銀白色の軟金属で、六方最密充填の構造を持ちます。湿気の多い環境では酸化しやすく、薄灰色に変わることがあります。塩酸や希硫酸と反応し、無色の水和カドミウムイオンを生成します。常圧での融点は320.9°C、沸点は765°Cと、金属元素の中では比較的低い数字です。

用途

カドミウムはウッド合金や顔料（二次電池の電極を含む）として広く利用されてきました。原子炉の制御材料や自動車関連のめっきにも使用されています。しかし、その毒性からカドミウムの使用が制限されつつあります。特に自動車業界では、カドミウムめっきが犠牲電極として効果的だったため、広範に使われましたが、近年はその使用が減少しています。

化合物

カドミウムは主に+2価の状態で存在し、無色の塩類が多いです。硫化カドミウム（CdS）は黄色顔料や半導体として使用されます。また、酸化カドミウム（CdO）やセレン化カドミウム（CdSe）なども利用されています。

影響

カドミウムの人体への影響として、慢性的な毒性やイタイイタイ病などが挙げられます。この毒性の一因は、亜鉛と似た挙動を示すことであり、亜鉛含有酵素の機能に干渉します。カドミウムは体内に長期間蓄積され、慢性的に健康を害します。特に農作物の汚染が懸念されており、日本では玄米に含まれるカドミウムの基準が厳格に設定されています。

環境と規制

日本では農作物のカドミウム含有基準が設けられ、基準以上を含む食物は販売禁止となっています。また、国際的にもカドミウムに関しては厳しい基準が設けられています。カドミウムの公害は過去に社会問題となり、多くの工場での排水管理が求められています。近年の脱カドミウムの動きとして、カドミウムを含む製品の製造に対する規制が厳格化され、より安全な代替品が開発されています。これにより、カドミウムに依存しない産業の構築が進んでいます。

カドミウムは多樣な用途とともに、リスクも伴う金属です。その取り扱いや管理が重要視される今、より安全な社会の実現に向けた努力が求められています。

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