ヴォー・グエン・ザップ

ヴォー・グエン・ザップの生涯

ヴォー・グエン・ザップ（1911年8月25日 - 2013年10月4日）は、ベトナムの著名な軍人かつ政治家であり、長年にわたりベトナム人民軍の指揮官として活躍しました。彼はフランスの植民地支配に対抗し、またベトナム戦争では北ベトナム軍を指揮し、アメリカ及び南ベトナム軍との戦いで重要な役割を果たしました。その戦略的な才能から、彼は「赤いナポレオン」とも称され、ベトナム人民からは「救国の英雄」として尊敬されました。

幼少期と教育

ザップはフランス領インドシナのクアンビン省で裕福な地主家庭に生まれましたが、父が独立運動家であったため、彼自身も幼少期から政治に触れることになりました。1919年に父の逮捕と獄死、姉の早逝を経験し、これが彼の独立運動に対する決意を固めるきっかけとなりました。学生時代には共産主義思想に接し、フエでの学生運動を通じて逮捕された経験も持つなど、早くから政治活動に関与していました。

彼はインドシナ大学に入学しますが、そこでも政治活動に身を投じ、再び逮捕されます。その後、彼はフランス植民地政府の弾圧を逃れ、中国に亡命し、ホー・チ・ミンと出会い、彼の側近として活動を始めます。

軍事家としてのキャリア

第二次世界大戦中、ザップはベトナム解放軍の前身となる部隊を作り上げ、1945年の八月革命で重要な役割を果たしました。1946年にはベトナム軍総指揮官に任命され、第一次インドシナ戦争を通じてゲリラ戦を指揮します。特にディエンビエンフーの戦いでは、人海戦術と呼ばれる独特の戦略を駆使し、フランス軍に対して勝利を収めました。

1954年にはベトナム労働党の中央委員に選出され、国防大臣としての責任も担います。その後、ベトナム戦争が勃発すると、再びベトナム人民軍の総司令官として北ベトナムを指揮し、南ベトナムとアメリカ軍に対抗しました。

戦後の活動と引退

1976年に南北ベトナムが統一されると、副首相兼国防大臣に留任しましたが、徐々に政治的な影響力は薄れ、引退後は政府の腐敗に対する批判を行い、特に若者からの支持を受けました。彼は、戦後もなお影響力を持つ存在であり続けました。

最期と遺産

ザップは2013年に102歳で亡くなり、その葬儀には国家主席や政府関係者だけでなく、多くの一般市民が参列しました。彼の生涯は、ベトナムの歴史において非常に重要な位置を占めており、現在もその軍事的功績は高く評価されています。彼の著作『人民の戦争・人民の軍隊』は、彼の考え方や戦略を知るための重要な資料となっています。

人物像

ザップは形式的な軍事教育は受けていなかったものの、独学で持ち得た魅力的な軍事知識を駆使して指揮官としての能力を発揮しました。趣味は音楽や読書であり、特にベートーヴェンやリストの音楽に親しんでいました。長寿の秘訣として「毎日運動し、細事に気を取られないこと」と答えている点からも、彼の生活哲学が垣間見えます。彼の生涯を通じ、彼は情熱的でありながらも自制心を持つ人物として多くの人々に称賛されました。

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