テナックス

テナックス（Tenax）とは

テナックスは、ドイツのカメラメーカーであるゲルツ（Goerz）と、後にツァイス・イコン（Zeiss Ikon）で使用されたカメラブランドです。その歴史は、写真乾板を使用する初期のモデルから、ロールフィルム、そして135フィルムへと展開し、時代とともに進化を遂げました。特にツァイス・イコン時代に登場した135フィルムカメラは、独特な巻き上げ機構とレンズ交換機能で知られ、その設計は後のカメラに大きな影響を与えました。

ゲルツ時代のテナックス

ゲルツ時代には、写真乾板やロールフィルムを使用する様々なテナックスが製造されました。これらのカメラは、当時の技術を結集したもので、高い光学性能と堅牢な作りが特徴です。以下に、代表的なモデルを紹介します。

写真乾板使用カメラ

マヌフォーク・テナックス（Manufoc-Tenax）：詳細な情報は少ないですが、初期のテナックスモデルの一つです。
タロー・テナックス（Taro Tenax）：こちらも詳細不明ですが、初期のモデルと推測されます。
ベストポケット・テナックス（Vest Pocket Tenax、1912年発売）：6×4.5cm判写真乾板を使用するカメラで、レンズにはセロール75mmF4.5、ドグマー75mmF4.5、またはダゴール75mmF6.8が搭載されました。シャッターはコンパウンド。新聞カメラマンのサブカメラとして人気を博し、当時のイカのベベと並び称される名機でした。レンズの描写性能は高かったものの、ボディの耐久性に課題があったとされています。1927年に製造中止となりました。
コートポケット・テナックス（Coat Pocket Tenax、1912年発売）：レンズにはドグマー100mmF4.5またはダゴール100mmF6.8が搭載され、シャッターはコンパウンドでした。こちらも1927年に製造中止。
ポケット・テナックス（Pocket Tenax、1912年発売）：詳細不明ですが、ベストポケット・テナックスやコートポケット・テナックスと同時期に発売されたモデルです。
テナックス・ステレオ：ステレオカメラで、固定式のドグマー60mmF6.3レンズを搭載していました。

120フィルム使用カメラ

ロールフィルム・テナックス（Rollfilm Tenax）：6×9cm判のロールフィルムを使用するカメラです。レンズはテナスチグマット10cmF6.8、シャッターはコンパウンドを搭載。

127フィルム使用カメラ

V.P.ロールフィルム・テナックス（V.P.Rollfilm Tenax）：4×6.5cm判の127フィルムを使用するカメラです。レンズはドグマー75mmF4.5またはダゴール75mmF6.8、シャッターは旧コンパーを搭載。イカのイカレッテ0号と並び称される名機でした。

ツァイス・イコン時代のテナックス

ツァイス・イコン時代には、135フィルムを使用するコンパクトカメラに大きくシフトしました。特に、24×24mm判を採用したモデルは、独特の巻き上げ機構が特徴です。ゲルツ時代の製品とは機構上の共通点はなく、全く新しい設計が採用されました。

テナックス/テナックスII（1938年発売）：連動距離計を内蔵し、レンズ交換が可能なコンパクトカメラです。交換レンズとして、オルソメター2.7cmF4.5、ゾナー4cmF2、テッサー4cmF2.8、ゾナー7.5cmF4が用意されました。シャッターは最高速1/400秒のコンパーラピッドをビハインドシャッターとして使用。巻き上げレバーはカメラ正面から見てレンズの左側にあります。当初はテナックスとして発売されましたが、後にテナックスIIに改名されました。また、オプションとして2.7cm用外付けファインダー、7.5cm用ファインダーマスク、4/7.5cmアルバダファインダーなどが用意されていました。
テナックスI/タクソナ（1939年発売）：距離計を持たないモデルで、レンズはノバー3.5cmF3.5またはテッサー3.5cmF2.8を搭載。シャッターはコンパーを採用。ファインダーは折り畳み式でした。巻き上げレバーはカメラ正面から見てレンズの右側にあり、指が当たる部分は折り畳み可能です。戦後、東ドイツでテッサー37.5mmF3.5またはノバー35mmF3.5を搭載して生産が継続されました。当初はテナックスIでしたが、1953年のマイナーチェンジでファインダーがトップカバーに内蔵され、巻き上げレバーが折り畳みできないモデルに変更されました。その後、東ドイツのツァイスが西側で旧ツァイスの商標を使用できなくなったため、タクソナ（Taxona）と改名され、同時にレンズもノボナー（Novonar）という名称に変更されました。

まとめ

テナックスは、ゲルツとツァイス・イコンという二つのメーカーによって製造されたカメラブランドであり、その歴史は写真技術の進歩とともに変遷しました。特にツァイス・イコン時代の135フィルムカメラは、その独特な設計思想で、多くのカメラ愛好家から支持されています。その優れた光学性能と革新的な機構は、現代においても高く評価されています。

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