ゲルツ

ゲルツ（C.P. Görz）

ゲルツは、かつてドイツに存在したカメラ及びレンズのメーカーです。創業者のカール・パウル・ゲルツ（Carl Paul Görz）は、1854年7月21日に生まれ、エミール・ブッシュの見習いとしてキャリアをスタートさせました。当初、「ゴルツ」と表記されることもありましたが、これは誤りです。

歴史

1886年、ベルリンで数学教材の製造会社として設立されました。しかし、1887年には写真業界への参入を果たし、1888年にはF.A. Hintzeの工房を買収し、カメラメーカーとしての地位を確立しました。第一次世界大戦中は、ドイツとオーストリアの軍需品を製造していました。

1889年には写真用レンズの製造を開始し、1890年には社名を「オプティッシェ・アンシュタルト・C.P.ゲルツ・ベルリン（Optische Anstalt C.P.Görz Berlin）」に変更しました。1892年には、エミール・フォン・フーフが就職し、彼の特許である「ドッペルアナスチグマート」を購入しました。1893年には、「ドッペルアナスチグマートシリーズIII」を発売し、1895年にはニューヨークにアメリカ支社を設立しました。

20世紀に入ると、1904年に「ドッペルアナスチグマート」の一部を「ダゴール」「セロール」「シントール」と改名しました。1905年にはアメリカ支社が独立し、「C.P.ゲルツ・アメリカン・オプティカル（C.P.Goerz American Optical Co.）」となりました。1908年には子会社「ゲルツ・フォトヘミシェ・ヴェルケ（Görz Photochemische Werke GmbH）」を設立し、写真感材事業に進出しました。1914年には「ゼントリンガー・オプティシェン・グラスヴェルケ（Sendlinger Optischen Glaswerke GmbH）」を吸収合併しました。しかし、同年には軍部との癒着がカール・リープクネヒトによって暴露されました。

1923年には、ハンガリーの軍需光学製品メーカーであるフェルディナント・ズュース（Ferdinand Suss AG）と提携しました。1925年には、不況により売り上げ不振に陥り、本社だけで200万マルクの損失を計上。単独での経営が困難となり、同年9月29日には、イカ、コンテッサ・ネッテル、カール・ツァイスとの間で利益共同体契約が締結されました。1926年5月8日には、ドイツ本社がイカ、コンテッサ・ネッテル、エルネマンと合併し、同年10月1日に新会社「ツァイス・イコン」が設立されました。この際、アメリカ支社とオーストリア支社は存続しました。1939年には、映画用レンズ「キノ・ハイパー（Kino Hypar）」がパイヤールのボレックスに採用されました。

1951年には、オーストリア支社が二眼レフカメラ「ミニコード」を発売しましたが、1972年にはアメリカ支社がシュナイダー・クロイツナッハに合併され、ゲルツの歴史に幕を閉じました。

主な製品

カメラ

アンゴー：日本の新聞社で報道カメラとして使用された、フォールディングプレスカメラの代表的な機種です。大正時代から使われ始めました。
テナックス：当時、イカのベベと並び称された名機で、様々なバリエーションが存在します。
ボックステンゴール：1928年に発売されたボックスカメラで、ツァイス・イコンでも引き続き製造されました。
ミニコード：1951年にオーストリア支社が製造した二眼レフカメラで、16mmフィルムを使用し、10×10mm判の撮影が可能です。レンズはヒルゴール（Hilgor）25mmF2。

写真用レンズ

セロール：4群4枚構成で、エミール・フォン・フーフが設計しました。元々は「ゲルツドッペルアナスチグマートシリーズIb」でしたが、1904年よりセロールという名称になりました。大判用レンズとして、ドイツ生産とアメリカ生産の様々な焦点距離のものが存在します。
ダゴール：ゲルツを代表する名レンズで、エミール・フォン・フーフが設計した2群6枚構成です。
ドグマー: 大判用レンズとして、アメリカで生産されました。
ゲルツドッペルアナスチグマート：手提げ暗箱用のシリーズIcと、カール・ツァイスのプロターに対抗するために設計されたシリーズIIaがあります。シリーズIIaは製造コストが高く、短期間で製造中止となりました。
ハイペルゴン：2群2枚の広角レンズで、エミール・フォン・フーフが設計しました。レンズ中心に風車状のものが付いており、多重露光で周辺光量低下を補正します。
パンター：2群8枚構成で、ドッペルアナスチグマートシリーズIIaの後継として設計されました。
シントール：4群4枚構成で、元々は「ゲルツドッペルアナスチグマートシリーズId」でしたが、1904年よりシントールという名称になりました。

映画用レンズ

キノ・ハイパー：パイヤールのボレックスに供給された映画用レンズで、様々な焦点距離とF値のものが存在しました。

関連項目

ツァイス・イコン：ゲルツのドイツ本社が合併し、設立された会社です。
シュナイダー・クロイツナッハ：ゲルツのアメリカ支社を合併した会社です。

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