テュートニック (客船)

テュートニック (SS Teutonic)

「テュートニック」は、ホワイト・スター・ラインが所有していた著名な客船です。その名は大西洋横断航路における速さの競争が激化していた時代に、一際輝きを放ちました。また、有事の際には武装商船として軍事にも貢献した、多面的な役割を担った船でもあります。

誕生とブルーリボン賞

1880年代、大西洋航路では、その速さを競う「ブルーリボン賞」を巡る激しい競争が繰り広げられていました。ホワイト・スター・ラインは、この栄誉を得るべく、造船業者ハーランド・アンド・ウルフに平均20ノット（時速約37km）を誇る高速船の建造を依頼します。こうして1887年、「テュートニック」とその姉妹船「マジェスティック」の建造が始まりました。

「テュートニック」は、ホワイト・スター・ラインの客船としては初めて、帆を装備しない設計で、1889年1月19日に進水。同年7月25日に完成し、8月1日にスピットヘッドで開催された観艦式に華々しく参加しました。当初は武装商船として建造され、4.7インチ砲を8門搭載していましたが、観艦式の後には取り外され、通常の客船として運航を開始しました。処女航海は8月7日、ニューヨークに向けて出発し、客船「バルチック」の後を継ぐ形で大西洋を横断しました。

1891年、姉妹船「マジェスティック」が先にブルーリボン賞を獲得しますが、そのわずか2週間後、「テュートニック」は20.25ノット（時速約37.5km）を記録し、見事ブルーリボン賞を奪還しました。その最高速度は20.5ノットに達しましたが、その後、客船「シティ・オブ・パリ」にその栄冠を奪われ、以降、ホワイト・スター・ラインの船舶がブルーリボン賞を獲得することは二度とありませんでした。

その後の活躍と戦争への参加

1897年、「テュートニック」はヴィクトリア女王の即位60周年記念式典に参加し、その威容を誇示しました。しかし、1898年にはニューヨーク港でユナイテッド・ステーツ・ラインの客船「ベルリン」と衝突する事故に見舞われます。幸い、大きな損傷には至りませんでした。

1900年、ボーア戦争の勃発により、「テュートニック」は軍事輸送船として徴用され、兵員や物資の輸送に従事しました。1901年に客船としての運航を再開しますが、その航海中に津波に遭遇。見張りの乗務員2名が海に投げ出されるというアクシデントが発生しましたが、奇跡的に生還を果たしました。また、津波が夜間に発生したため、乗客への大きな被害はありませんでした。

1911年、「テュートニック」はドミニオン・ラインに移籍し、カナダ方面の航路で運航されることになりました。1913年には、老朽化により乗客数が減少したため、客室は2等客と3等客のみに限定されました。そして1914年、第一次世界大戦が勃発すると、再び軍に徴用され、6インチ砲を装備した武装船として、船団護衛や輸送任務に就きました。

終焉

第一次世界大戦終結後、「テュートニック」は1921年にドイツのエムデンで解体され、その波乱に満ちた生涯を終えました。

関連項目

マジェスティック (客船) - 姉妹船
ブルーリボン賞 (船舶)

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