テリー・イーグルトン

テリー・イーグルトン：マルクス主義文芸批評家の巨人

テリー・イーグルトン（1943年生まれ）は、現代を代表するイギリスの文芸批評家、哲学者です。鋭い批評眼と多様な知見で知られ、マルクス主義、神学、精神分析学など、複数の領域を横断する独自の学問体系を築き上げてきました。その影響は、文学研究のみならず、現代思想全般に及んでいます。

ケンブリッジからマンチェスターへ：輝かしい学究の道

イーグルトンは、イングランドのサルフォードに生まれました。24歳の若さでケンブリッジ大学トリニティー・カレッジで博士号を取得するという快挙を成し遂げます。その後、オックスフォード大学の複数のカレッジで研鑽を積み、現在はマンチェスター大学で文化論の教授、そしてジョン・ライランズ・フェローという重要な研究員職を務めています。

マルクス主義的アプローチと多様な影響

イーグルトンは、マルクス主義の文芸批評家として名高いレイモンド・ウィリアムズに師事しました。初期の研究では、19世紀から20世紀の文学をマルクス主義的な視点から分析し、多くの重要な論文を発表しました。最近では、研究手法を伝統的な文学論に近づけていますが、マルクス主義的な視点は依然として彼の著作の根底に流れています。

1960年代には、ケンブリッジ大学の急進的カトリック集団「Slant」にも参加。同集団が発行した『新左翼神学論』に多くの寄稿をしています。彼の著作には、常に神学的な問題への関心が垣間見えます。また、精神分析学からの影響も強く、スラヴォイ・ジジェクなどの思想家への支持も公表しています。

代表作『文学とは何か』と現代文化への鋭い批判

イーグルトンは、単に学者としてだけでなく、政治的にも活動的なマルクス主義者でした。オックスフォード時代には、労働者社会主義同盟に参加し、活動に熱心に取り組んでいます。同時に、『New Statesman』や『Red Pepper』、『ガーディアン』といった影響力のある雑誌や新聞に評論を寄稿し、社会問題への関与を続けてきました。

彼の代表作である『文学とは何か』（Literary Theory: An Introduction）は、19世紀ロマン主義からポストモダニズムまでの文学を、マルクス主義的視点から網羅的に分析した、現代文学研究の入門書として世界中で高く評価されています。この著作では、当時の流行学説であった脱構築主義なども批判的に吟味しています。

さらに、2003年の著作『アフター・セオリー』では、現代文化研究のあり方そのものを批判的に考察しています。現代の学際的な研究手法を否定するのではなく、包括的な視点が欠如している点を指摘し、絶対的な価値の必要性を説いています。人間存在における身体と死滅の重要性を強調し、絶対的価値の実在を主張している点が特徴的です。

多彩な著作とアイルランド文化研究

イーグルトンは数多くの著作を執筆しています。その著作は、文学批評のみならず、哲学、神学、政治評論など、多岐にわたります。また、アイルランド文化に関する三部作も著しており、この分野でも重要な貢献を果たしています。

彼の著作は、筒井康隆の小説『文学部唯野教授』にも影響を与えたとされています。

結論

テリー・イーグルトンは、マルクス主義的な視点から、文学、文化、現代社会を鋭く分析し、世界中に大きな影響を与え続けている、現代を代表する重要な思想家の一人です。彼の著作は、現代社会を考える上で、常に重要な示唆を与えてくれるでしょう。

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