テレマティクス

テレマティクスとは

テレマティクスは、テレコミュニケーション（電気通信）とインフォマティクス（情報処理）を組み合わせた造語で、移動体に通信システムを利用して情報サービスを提供する技術の総称です。特に自動車分野では、カーナビゲーションシステムと連携し、交通情報や天気予報、電子メールなどの情報を提供するとともに、車両の走行情報などを収集する双方向通信の仕組みとして発展してきました。

テレマティクスの概要

テレマティクスの主な目的は、自動車などの移動体において、安全・安心機能の実現と情報配信による利便性の向上です。具体的には、エアバッグ連動の自動緊急通報機能や車両盗難時の追跡機能などの安全機能、交通情報配信や電子メール、天気予報などの利便性向上が挙げられます。

当初は、個々の車両内での機能に留まっていましたが、近年では高度道路交通システム（ITS）の一端を担う技術として期待されています。自動車メーカーのトヨタ[[自動車]]は、1990年代後半からテレマティクスの導入を検討し始め、2000年には「G-BOOK」サービスを開始しました。初期のG-BOOKサービスは、緊急通報や点検時期のお知らせなど、顧客の安心・安全をサポートするものでしたが、車両と情報センターの常時接続は行われていませんでした。

日本の商用テレマティクスの先駆けとしては、2004年にサービスを開始したいすゞ[[自動車]]の「みまもりくん（現MIMAMORI）」が挙げられます。このサービスは、自社車両だけでなく他社車両にも搭載可能で、車両、会社、荷主をネットワークで繋ぎ、燃費情報や到着予定時刻を共有できるのが特徴です。

車と情報センターが常時接続される自動車は「コネクテッドカー」と呼ばれており、テレマティクスの進化を象徴しています。

テレマティクスの利用例

テレマティクス保険

テレマティクス保険は、テレマティクス端末から収集した走行データ（走行距離、運転速度、急発進・急ブレーキなど）に基づいて保険料を算出する保険です。走行距離に応じて保険料が変わる「走行距離連動型（PAYD）」と、運転行動に応じて保険料が変わる「運転行動連動型（PHYD）」の2種類があります。

PHYD型保険は、過去の事故歴や違反歴がないドライバーだけでなく、日々の運転行動に基づいて「安全運転」を評価できるため、若年層など実績の少ないドライバーにも公平な保険料を提供できると考えられています。アメリカやイギリスでは、既に多くの加入者がおり、日本でも近年普及が進んでいます。

アメリカのプログレッシブ保険は、1990年代からテレマティクス保険の研究・実証実験を行い、走行距離と事故リスクの関連性を明らかにし、走行データに基づいた保険料算出の根拠を確立しました。日本においては、2004年にあいおい損害保険がPAYD型保険を、2018年にトヨタ[[自動車]]とあいおいニッセイ同和損害保険がPHYD型保険を開発・提供しました。

遠隔管理・監視システム

テレマティクスは、建設機械やジェットエンジンの遠隔監視にも活用されています。小松製作所の「KOMTRAX」やゼネラル・エレクトリックの「ICEMS」などが代表例です。これらのシステムは、機械の稼働情報をリアルタイムで収集・分析することで、故障の予兆を検知し、保守計画の最適化や故障の未然防止に役立てられています。

船舶

船舶においても、テレマティクスは航路の最適化に貢献しています。各船舶から送信される航海データや気象衛星からの情報を分析することで、燃料効率の良い航路を選択し、コスト削減につなげることができます。

まとめ

テレマティクスは、自動車分野にとどまらず、建設機械や船舶など幅広い分野で活用されています。今後は、IoT技術との連携が進み、より高度で便利なサービスが提供されることが期待されます。

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