テングコウモリ

テングコウモリ（天狗蝙蝠）

テングコウモリ（学名：Murina hilgendorfi）は、哺乳綱コウモリ目ヒナコウモリ科テングコウモリ属に分類されるコウモリの一種です。その名の通り、天狗の鼻のように管状に突き出た鼻孔が特徴的です。本種は日本の固有種であり、北海道から九州にかけて広く分布しています。

分布と生息環境

テングコウモリは、かつては樹洞を主なねぐらとしていましたが、森林伐採などによる大木の減少に伴い、洞窟をねぐらとする個体も増えています。また、人家などの建造物にも生息することが確認されています。このように、テングコウモリは環境の変化に柔軟に対応できる適応能力を持っています。

形態

テングコウモリは、前腕長が41〜46mm、頭胴長が59〜73mm、尾長が36〜47mm、体重が9〜15g程度の比較的小さなコウモリです。体毛は羊毛のように細かく、体上面は灰汁色をしています。また、体上面には銀色に光る長い毛がまばらに生えています。翼は幅広く、他のコウモリに比べて比較的低空を飛翔することが知られています。腿間膜（たいかんまく）は上下面とも毛で密に覆われている点も特徴です。

生態

テングコウモリは、他のコウモリのように大きな群れを形成することはあまりなく、単独または数頭の小さな群れで生活することが多いです。夕方早くに活動を開始し、カブトムシやガなどの昆虫を捕食します。食性は完全な虫食性です。また、洞窟内では多数のテングコウモリの遺骸が発見されることもあります。

分類

テングコウモリの近縁種としては、コテングコウモリやクチバテングコウモリが知られています。コテングコウモリは、テングコウモリよりもさらに小型で、鼻孔がより突出し、毛色が金色に近いという特徴があります。一方、クチバテングコウモリは、中型で腿間膜に毛がなく、枯れ葉のような色をしています。かつて屋久島でコテングコウモリとして記録されたものが、実際にはクチバテングコウモリであったという事例もあります。また、国外にはキタテングコウモリという近縁種も存在します。

テングコウモリは、日本の自然環境を象徴するユニークなコウモリです。生息地の保護や生態に関する研究が、今後ますます重要になるでしょう。

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