テンジクアオイ属

テンジクアオイ属（Pelargonium）とは

テンジクアオイ属は、フウロソウ科に属する植物の属で、約230種が知られています。多年草や半低木が多いですが、一年草や多肉[[植物]]、匍匐性や蔓性のものもあります。主に亜[[熱帯]]や熱帯地域に分布しており、半耐寒性の種が多いのが特徴です。

属名の由来

属名「Pelargonium」は、ギリシャ語の「こうのとり（pelargo）」に由来します。これは、果実にある錐状の突起が、こうのとりのくちばしに似ているためです。英語では「stork's bill（こうのとりのくちばし）」とも呼ばれます。

テンジクアオイ属の特徴

葉は対生または螺旋状につき、単葉で掌状または羽状の切れ込みや鋸歯があります。無毛のものと有毛のものがあり、強い香りを持つものが多いです。花は茎の先に直立して咲き、5枚の花弁と5裂する萼を持ちます。花色は赤、ピンク、白、藤色、紫、オレンジ、サーモンピンクなど様々で、絞りや覆輪、星形模様などの複色花や、八重咲きの品種もあります。

園芸種について

現在栽培されている園芸種のほとんどは、南アフリカ原産のいくつかの原種を交配して作られたものです。約20の原種から数千もの品種が生まれています。これらの原種は、18世紀にプラントハンターのフランシス・マッソンによってヨーロッパに持ち込まれました。

呼称の混乱

園芸植物として栽培されるテンジクアオイ属の植物は、一般的に「ゼラニウム」と呼ばれています。しかし、この呼称は紛らわしく、同じフウロソウ科のフウロソウ属（Geranium）の植物も「ゼラニウム」と呼ばれるため、注意が必要です。もともと、これらの植物は同じGeranium属に分類されていましたが、1789年に多肉質のPelargonium属が分離されました。しかし、園芸の世界では、古くから親しまれてきた「ゼラニウム」という名前が残ってしまったのです。そのため、園芸店などでは、同じテンジクアオイ属の植物を、ラテン名の「ペラルゴニウム」と「ゼラニウム」の両方で呼ぶことがあり、混乱を招いています。

ペラルゴニウムとゼラニウムを区別する際には、一季咲きのものをペラルゴニウム、四季咲きのものをゼラニウムと呼ぶ場合もあります。

最初に栽培された品種

最初に栽培されたのは、南アフリカ原産のPelargonium tristeです。

香り高い品種

バラのような芳香を持つPelargonium graveolensは、ゼラニウム、ローズゼラニウム、貧乏人のバラとも呼ばれ、和名では「匂い天竺葵」と呼ばれます。香水や香料の原料として古くから栽培されてきました。

園芸における系統

園芸では、テンジクアオイ属の植物は以下の4つの系統に分けられます。

1. ゼラニウム: 四季咲き性で、日本で栽培されているのはこの系統がほとんどです。花色のバリエーションが豊富です。
2. ペラルゴニウム: ゼラニウムよりも高性で、初夏から夏にかけて開花します。欧米では花壇用として栽培されていますが、日本ではあまり見られません。
3. アイヴィ・ゼラニウム: つたのような葉を持ち、半蔓性になります。
4. センテッド・ゼラニウム: りんご、みかん、バラなど、様々な香りを持つ系統です。近年、ハーブとして人気が高まっています。

様々な利用

テンジクアオイ属の植物は、かつて南アフリカで下痢止めとして使われていました。また、胃炎や神経痛、発熱、月経不順などの治療にも使われた品種もあります。抽出物には強い抗菌作用を持つものもあり、現在でもハーブ薬として利用されています。

シトー教会の創始者である聖ロバートは、ペストが流行した際に、ゼラニウムの野生種を治療薬として使用したと伝えられています。そのため、「ハーブ・ロバート」という品種も存在します。

Pelargonium sidoidesは、総合感冒薬として用いられています。

ローズゼラニウムは、もともと香料用として栽培されていましたが、初期のアロマセラピストが、古いイギリスの本草書にあるヒメフウロの情報を誤って転用したため、アロマセラピーでも広く使われるようになりました。下痢止めの効果は、主にタンニンやフラボノイドなどの水溶性成分によるものですが、精油にはこれらの成分が含まれていません。したがって、精油を内服しても下痢止めの効果は期待できません。精油の香りには鎮静作用と刺激作用の両方があり、人によってはリラックス効果が得られる一方、逆効果になる場合もあります。比較的安全な精油であり、食品業界や化粧品業界で広く使用されていますが、近年EUでは、強い感作性を持つとの評価がなされています。ローズゼラニウム油やその成分は、偽物のローズ油やローズ油の増量剤としても使用されています。

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