テン・コード

テン・コードとは

テン・コード（Ten-code）は、無線通信において簡潔な意思伝達を目的として使用される略号です。正式にはテン・シグナル（Ten-signal）と呼ばれ、主に法執行機関や市民ラジオなどの無線通信で、日常的な慣用句を効率的に伝えるために用いられてきました。

歴史

テン・コードの起源は1930年代に遡ります。1937年から1940年にかけて発展し、無線通信の効率化を目指して考案されました。特に、イリノイ州警察の通信責任者であったチャールズ "チャーリー" ホッパーが、通話量の削減と通信品質の向上を目的に開発に貢献しました。初期の無線技術では、送信時に最初の音節が不明瞭になることが多かったため、「10」を各コードの先頭に付加することで、送信機の出力安定までの時間を稼ぐ工夫が凝らされました。

1974年には、国際通信職員協会（APCO）が通話の簡潔化と標準化を目的として、テン・コードを正式に採用し、その利用が拡大しました。しかし、標準化の欠如から地域や機関によってコードの意味が異なるという問題が生じ、2006年にはアメリカ連邦政府が公務での使用を推奨しないという勧告を出すに至りました。

大衆文化におけるテン・コード

テン・コード、特に「10-4」（了解、理解した）は、1950年代のテレビドラマ『ハイウェイ・パトロール』を通じて広く一般に認知されるようになりました。また、市民ラジオ（CB無線）愛好家の間でも頻繁に使用され、1975年のヒット曲「コンボイ」や、それを基にした映画『コンボイ』によって、日常会話にテン・コードを取り入れる現象が定着しました。

ニューヨーク市警察で使用されるテン・コードは、テレビドラマ『ブルーブラッド』の影響で注目を集めていますが、APCOで採用されているものとは異なる点に注意が必要です。また、1972年に日本で放映された特撮番組『緊急指令10-4・10-10』や、イギリスの人形劇『地球防衛軍テラホークス』など、様々な作品でテン・コードが使用されています。

現代におけるテン・コード

近年では、テン・コードの意味の多様化が組織間の連携を阻害する要因となることが認識されるようになり、平易な言葉への置き換えが進められています。2005年、アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁（FEMA）は、ハリケーン・カトリーナ後の救助活動における組織間コミュニケーションの問題に対応するため、テン・コードの使用を推奨しない方針を打ち出しました。国土安全保障省のSAFECOMプログラムも同様に、地方自治体に対し平易な語句への移行を推奨しています。

APCO自身も、従来のテン・コードに代わり、公安無線を通じた簡易語句の利用を推奨しており、多くの分野でテン・コードが利用されている一方で、段階的な廃止が進められています。

その他のコード

カリフォルニア・ハイウェイ・パトロールは、独自の11から始まるコードを使用しています。ロサンゼルス市警察では、カリフォルニア州刑法の条文番号をそのまま取り入れたコードが使用されており、福祉関連で使用される4桁のコードも存在します。

NATOでは、軍事通信でZコードが使用されるほか、Qコードも標準手順として利用されています。

テン・コードは、無線通信の効率化に貢献した一方で、現代においては平易な言葉への移行が進んでいます。その歴史と背景を理解することで、より円滑なコミュニケーションを目指すことができるでしょう。

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