テ・デウム (ブルックナー)

テ・デウム（Te Deum）ハ長調 WAB.45

アントン・ブルックナーの「テ・デウム」は、彼の宗教音楽の一つであり、後期ロマン派期の合唱曲の頂点とも言われる作品です。この曲は、主に神を讃えるために作曲され、その力強さと荘厳さが特徴的です。

作曲の経緯

「テ・デウム」は1883年から1884年にかけて作曲されました。その時期は、リヒャルト・ワーグナーの死やブルックナーの交響曲第7番の完成直後にあたり、ブルックナーの音楽スタイルが成熟した時期でもあります。レオポルト・ノヴァークによれば、実際には1881年に初期のスケッチがあり、この段階では作曲は未完成でした。

この作品は1868年に完成した「ミサ曲ヘ短調」以来の大規模な宗教音楽として位置づけられ、ブルックナーの音楽の重要な一部としての役割を果たしています。

出版

最初の版は1885年に出版され、フランツ・シャルクによる校訂が行われました。1962年にはノヴァークによる原典版が出版され、このスコアは「テ・デウム 1884年版」として知られています。初版とノヴァーク版には数点の相違が存在し、特にオルガンの省略可能指示などが異なります。

初演

「テ・デウム」は1885年にブルックナーの指揮によってピアノ伴奏で初演され、1886年にはハンス・リヒター指揮によるオリジナルの管弦楽編成での初演も行われました。この作品はブルックナーの生前に30回演奏された記録があります。日本での初演は1935年に行われ、ヨーゼフ・ラスカ指揮の宝塚交響楽団によって演奏されました。

楽器編成

この合唱曲の編成は以下の通りです：

• - 独唱者: ソプラノ、アルト、テノール、バス
• - 合唱: 混声合唱
• - オーケストラ: フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、チューバ、ティンパニ、オルガン、弦五部

演奏時間は約24分です。

構成

この作品は数つの楽章から構成されており、各楽章には特有の特徴があります。

• - 第1楽章「神なる御身を我らはたたえ」（Te Deum laudamus） は力強く始まり、合唱が荘厳に歌唱します。
• - 第2楽章「御身に願いまつります」（Te ergo quaesumus）はモデラートで静かな雰囲気の中で展開されます。
• - 第3楽章は和声法が大胆で、無伴奏コラールで締めくくられます。
• - 第4楽章「御身の民を救いたまえ」（Salvum fac populum tuum）は、第2楽章に似た雰囲気で合唱が力を増していきます。
• - 終楽章では独唱者による重唱が、交響曲第7番の旋律に基づくフーガへと発展し、力強い締めくくりを見せます。

交響曲第9番との関係性

1894年、ウィーン大学での講義において、ブルックナーは交響曲第9番が未完成に終わった場合には「テ・デウム」を演奏する意向を示したと言われています。このため、両作品の特別な関係が研究されていますが、確証に欠けている部分も多いです。

参考文献

• - 音楽之友社『作曲家別名曲解説ライブラリー 5 ブルックナー』
• - ノヴァーク版スコア「テ・デウム 1884年版」

この作品は、宗教音楽の枠を超え、音楽史においても重要な意義を持つ作品として多くの演奏会で取り上げられ続けています。

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