アルト

アルト (Alto)

アルトは、声楽の女声において重要な役割を果たす声域の一つであり、一般に「コントラルト」とも呼ばれています。これは、テノールよりも高い音域を示すもので、今日では主に女性の低音域を指します。また、合唱においては女性の低い声部を指す用語としても使われています。

語源

イタリア語の「アルト」は「高い」という意味を持ち、本来は男性の高音を示す言葉でした。中世の教会音楽では、女性の歌唱が禁じられていたため、男声や少年のファルセットによって歌われることが一般的でした。しかし、時代と共に女性による歌唱が普及し、「アルト」は女性の低い声域を表す言葉として使用されるようになりました。歴史的には、ラテン語の「teneo」から派生した「テノール」という言葉が、上声部に対する持続音部を示すために用いられていました。

アルトとコントラルトの違い

現代の音楽用語において、アルトとコントラルトは使い分けられています。アルトは合唱の声部を指し、一方でコントラルトは女性の声質を指すことが一般的です。ただし、実際にはこの二つの言葉の区別はあいまいです。一般的には、女声はソプラノ、メゾソプラノ、アルトの三つの群に分けられ、アルト歌手はF3からB5の声域を持つことが多いですが、日本においてはアルト歌手は非常に少ないのが現状です。

合唱におけるアルト

合唱では、女声を二部に分けた際の下部声部を指す場合もあります。この場合、歌っているのは多くがメゾソプラノであり、真のアルトとは区別されるべきです。合唱におけるアルトパートは、一般的にG3からE5の範囲で歌われます。混声合唱では、アルトはテノールと組み合わさって内声を形成します。

アルト独唱

オペラの世界では、アルト歌手は主役の役割を担うことは少なく、むしろ年配のキャラクターを演じることが一般的です。たとえば、ワーグナーの『ニーベルングの指環』におけるエルダや、ムソルグスキーの『ボリス・ゴドノフ』に登場する乳母などが挙げられます。また、宗教音楽においてもアルト独唱のアリアが多く存在します。ブラームスの『アルト・ラプソディ』やマーラーの『大地の歌』なども有名です。

アルトを用いた楽器名

アルトという言葉は楽器名にも使われます。例としては、アルトフルート、アルトクラリネット、アルトサクソフォーン、アルトトロンボーン、アルトホルン、アルトリコーダーなどが挙げられます。フランス語においてもアルトはヴィオラを意味するため、音楽の文脈では重要な役割を担っています。

結論

アルトは、女声の音域としてだけでなく、合唱や独唱、楽器表現においても重要な位置を占めています。その独特な音色と役割は、音楽作品の多様性を豊かにし、演奏者や作曲家に様々な表現の機会を提供しています。

もう一度検索