テート川

フランス、ピレネーの恵み：テート川

フランス、オクシタニー地域圏のピレネー＝オリアンタル県を潤すテート川。その全長は116km、流域面積は1,550平方kmに及び、地域にとってかけがえのない存在です。別名テ川とも呼ばれ、北カタルーニャ地方を流れ、ペルピニャン近郊で地中海へと注ぎます。

源流からブイユーズ湖へ

テート川は、ピレネー山脈の雄峰カルリ峰の標高2,400m地点に源を発します。その上流、標高2,017m地点には、広さ1.49平方キロメートルにも及ぶブイユーズ湖が広がります。この湖は1903年から1910年にかけて建設されたダムによって生まれた人造湖であり、ルシヨン地域への重要な水源となっています。冬には湖面が凍結するほどの寒冷な気候であり、その水は下流にある複数の水力発電所を稼働させるエネルギー源にもなっています。特に、セルダーニュ線への電力供給という重要な役割を担っています。

中流・下流：歴史と文化が息づく流域

テート川は、モン＝ルイ、オレット、ヴィルフランシュ＝ド＝コンフランといった歴史ある美しい町々を通り抜けます。ヴィルフランシュ＝ド＝コンフランより上流側には、観光名所としても知られる黄色い電車、セルダーニュ線が走っています。この路線は、下流側のペルピニャン＝ヴィルフランシュ＝ド＝コンフラン線との乗り換え地点ともなっています。ただし、セルダーニュ線は狭軌、ペルピニャン＝ヴィルフランシュ＝ド＝コンフラン線は標準軌であるため、両路線を直通することはできません。

流域で最初に現れる一定規模の町はプラードです。カニグー山の麓に位置するこの町は、スペイン内戦中にはスペイン人チェリストの巨匠、パブロ・カザルスが1939年から1955年まで亡命生活を送った地であり、カタルーニャ文化にとって特別な場所として知られています。

ヴァンサの町の北側にはヴァンサ湖が広がっており、イル＝シュル＝テ付近からは視界が開け、豊かな自然を感じられます。そして、流域最大の都市は、ピレネー＝オリアンタル県の県都であるペルピニャンです。テート川が形成した肥沃なルシヨン平野の中央に位置するペルピニャンは、地域の中心都市として発展してきました。市内にはテート川の分流であるバッサ川が流れ、その河岸には14世紀に建設されたカスティエ門や、14世紀初頭に完成したマジョルク王宮などの歴史的建造物が立ち並び、訪れる人々を魅了しています。ペルピニャンから約10キロメートル流れ下ったカネ＝タン＝ルシヨンで、テート川はその長い旅を終え、地中海へと流れ込みます。

テート川は、ピレネー山脈を源とする清らかな水であり、流域の人々の生活、文化、そして歴史を育んできた母なる川と言えるでしょう。

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