テーレウス

テーレウスの神話

テーレウス（古希: Τηρεύς）は、ギリシア神話に登場するトラーキアの王であり、アレースの子とされています。彼の物語は、ドロドの神話の中でも特に悲劇的な側面を持っており、妻のプロクネーとその姉妹ピロメーラーとの複雑な関係が織り交ぜられています。

神話の基本構造

物語は、アテーナイ王パンディーオーンとテーバイ王ラブダコスの間の国境問題に始まります。この争いにおいて、テーレウスは王パンディーオーン側につき、見事に戦に勝利しました。その報酬として、パンディーオーンから娘のプロクネーを妻として受け取ります。二人は子供を授かり、イテュスという名の息子が生まれました。

しかし、時が経つにつれ、テーレウスはプロクネーの姉妹であるピロメーラーに心を惹かれてしまいます。彼はプロクネーを田舎に隠し、彼女が亡くなったと偽り、ピロメーラーと不適切な関係を持つという大きな裏切りを犯しました。

ピロメーラーの復讐

ピロメーラーは、テーレウスによって舌を切られ、言葉を失いました。しかし彼女は自分の状況を伝えるために、長衣に文字を織り込んでプロクネーに送ります。プロクネーは妹を見つけ出すと、凄惨な復讐を計画しました。彼女は自分の息子イテュスを殺し、調理してテーレウスに提供したのです。その後、姉妹は共に逃亡しました。

テーレウスが自分が食べたものの正体を知った時、彼は怒りに燃え、斧を持って姉妹を追いかけます。そして、ダウリアの地で二人に追いついたとき、姉妹は神に祈り、姿を変えてもらうことを願います。結果、プロクネーはナイチンゲール、ピロメーラーはツバメ、そしてテーレウスはヤツガシラとなります。

異説とその解釈

この物語には異なるバージョンも存在し、オウィディウスの『変身物語』では、テーレウスがピロメーラーを恋したのは結婚から5年後だとされます。その中でピロメーラーはテーレウスに告発し、イテュスの首を投げつける場面が描かれています。また、ヒュギーヌスの『物語集』では、事の発端が異なる内容になっています。

文化的背景

イギリスの詩人ロバート・グレーヴスは、この神話の解釈において、トラーキアの文化を反映したものとして述べています。彼はテーレウスが「観察者」を意味し、最終的な姿の変化は地元の儀式や占いに根ざしたものだと考えます。物語の混乱は、原初の物語が伝播する過程で起こった誤解によるものだとも言われています。

このようにテーレウスの物語は、ギリシア神話の中でも屈指の悲劇を含んでおり、道徳的な教訓や人間の感情の深さを考察する際の参考になるものです。

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