ディアンジェロ

ディアンジェロ

本名マイケル・ユージーン・アーチャー（Michael Eugene Archer）、1974年2月11日にアメリカ合衆国バージニア州リッチモンドに生まれたシンガーソングライター。リッチモンド南部の宣教師の家庭に育ち、幼い頃から歌唱に親しんだ。

音楽性とキャリア

ディアンジェロは、単なる歌手にとどまらず、ピアノやギターの演奏、そして作詞作曲やプロダクションまでを自ら手がけるマルチな才能の持ち主である。自身の音楽的な源泉として、マーヴィン・ゲイやプリンスといった偉大な先達の名前を挙げているが、彼自身もまた、後進の多くのアーティストに多大な影響を与えている存在、いわゆる「ミュージシャンズ・ミュージシャン」として知られている。

彼のキャリアは、1995年に発表したデビューアルバム『ブラウン・シュガー』によって幕を開けた。この作品は、マーヴィン・ゲイやスティーヴィー・ワンダーといった往年のソウルミュージックが持つ豊かなフィーリングと、当時のヒップホップ世代が持つ先進的な感性を絶妙に融合させたものだった。これにより、彼は「ニュークラシック・ソウル」「ネオ・ソウル」「オルタナティブR&B」といった新たな音楽の潮流を生み出す中心人物となり、多くのフォロワーを生み出した。その革新性は高く評価され、続く2000年のセカンドアルバム『ヴードゥー』で、彼は名実ともにネオソウルを代表するアーティストとしての地位を確立した。

寡作ながら影響力を持つ活動

『ヴードゥー』発表以降、ディアンジェロ自身の名義によるオリジナル作品のリリースは長期間にわたって途絶えることとなった。しかし、約14年の沈黙を経て、2014年12月15日には待望の3枚目のアルバム『ブラック・メサイア』がデジタル配信で突如リリースされ、大きな話題を呼んだ。このカムバック作もまた、批評家から絶賛され、グラミー賞を受賞するなど、彼の芸術性の高さが改めて示された。

多作で知られるプリンスなどとは対照的に、ディアンジェロは自身の名義でのアルバム発表こそ寡作な傾向がある。しかし、その活動は自身の作品に留まらない。他のアーティストへの楽曲提供、時代を超えた名曲のカバー、そして数多くのアーティストとの共演（客演）を精力的に行っている。例えば、ローリン・ヒル、コモン、J.ディラ、ザ・ルーツ、スヌープ・ドッグ、メソッド・マンといったヒップホップやR&Bシーンの重要人物たちとの共演や、ロバータ・フラック、アース・ウインド＆ファイアー、プリンス、アル・グリーン、フェラ・クティなどの名曲をカバーしていることは、彼の音楽的視野の広さと、様々なシーンからのリスペクトの深さを示している。

また、音楽ゲーム『レッド・デッド・リデンプション2』のサウンドトラックに楽曲「Unshaken」を提供するといった、意外な分野への参加も見られる。

自身の音楽に対する意識についても独特の発言を残している。インタビューでは「自分のことをR&Bシンガーだと思ったことは一度もない」「いつだってR&Bなんてつまらないと思っていた」と語っており、初めて制作した曲はヒップホップであったこと、普段からラップもしていることなどを明かしている。これは、彼が特定のジャンルに縛られず、常に新しい表現を追求している姿勢の表れと言えるだろう。

ライブ活動と現在の地位

寡作ながらも、ライブ活動には積極的であり、特に日本には「D'ANGELO AND THE VANGUARD」名義で複数回来日している。2015年にはSUMMER SONIC|SUMMER_SONICのヘッドライナーを務め、巨大な会場を満員にするなど、その商業的な成功も確固たるものがある。芸術性の高さと、大衆を魅了する商業性の両方を兼ね備えた稀有なアーティストとして、現代の音楽シーンにおいてゆるぎない、非常に重要なポジションを確立している。

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