ディスタンス (バンド)

ディスタンス（Distance）

ディスタンスは、1980年代後半に音楽プロデューサーでありベーシストとしても名高いバーナード・エドワーズの主導のもと結成された、ロックとファンクを融合させたバンドである。その音楽性は、バーナード・エドワーズがかつて在籍したパワー・ステーションにも通じる、パワフルで都会的なサウンドを特徴としていた。

メンバー構成

このバンドは、豪華なメンバーが集結したことから「スーパーグループ」とも称された。

バーナード・エドワーズ (Bernard Edwards)：ベース、プロデューサー。シックのリズム隊、そしてパワー・ステーションのメンバーとして知られる中心人物。
トニー・トンプソン (Tony Thompson)：ドラムス。バーナード・エドワーズと共にシック、そしてパワー・ステーションの屋台骨を支えたドラマー。
ロバート・ハート (Robert Hart)：リードボーカル。後にハードロックバンド、バッド・カンパニーのメンバーとして活躍することになる実力派ボーカリスト。
エディ・マルチネス (Eddie Martinez)：ギター。多数のアーティストのレコーディングに参加しているセッションミュージシャン。
ジェフ・ボヴァ (Jeff Bova)：キーボード。こちらも多くのセッションやアレンジを手がけるキーボード奏者。

シック～パワー・ステーションという経歴を持つ強力なリズム隊に、将来性豊かなボーカリストと経験豊富なセッションミュージシャンが加わった編成であった。

活動と唯一のアルバム

期待されたディスタンスだが、その活動期間は比較的短く、リリースされた作品はわずかである。1989年にリプリーズ・レコードから、彼ら唯一のスタジオ・アルバムとなる『アンダー・ザ・ワン・スカイ』（Under the One Sky）を発表した。

パワー・ステーションを思わせるタイトなリズムと力強いボーカルが魅力のこのアルバムには、イギリスの人気ポップデュオ、ゴー・ウエストの片割れであるリチャード・ドラミーが「Everytime I Stand Up」という楽曲に共作者としてクレジットされている。

しかし、残念ながらアルバムは全米チャートにランクインすることはなく、ここから大きなヒット曲も生まれなかった。これは、同時期に活躍したパワー・ステーションと比較すると、商業的には成功したとは言えない結果となった。

映画出演とサウンドトラック

アルバムリリースに先立つ1987年、ディスタンスはウーピー・ゴールドバーグ主演の映画『バーグラー/危機一髪』（Burglar）に出演している。劇中では、クラブで演奏するバンドとして登場し、そのパフォーマンスを見せた。

この映画では、バンドの中心人物であるバーナード・エドワーズ自身が音楽プロデューサーを務めており、サウンドトラックにも深く関与している。彼のプロデュースワークは、映画の音楽面を支えた。

映画関連では、サウンドトラック・アルバム『Burglar: Original Motion Picture Soundtrack』がリリースされており、ディスタンスの楽曲が収録されている。また、映画の公開に合わせてシングルも発表されている。

ディスコグラフィ

ディスタンスが公式にリリースした主要作品は以下の通りである。

スタジオ・アルバム

『アンダー・ザ・ワン・スカイ』 (Under the One Sky)
リリース年: 1989年
レーベル: Reprise
ディスタンスとして唯一のオリジナル・アルバム。

サウンドトラック・アルバム

Burglar: Original Motion Picture Soundtrack
リリース年: 1987年
ウーピー・ゴールドバーグ主演映画『バーグラー/危機一髪』のサウンドトラック。ディスタンスは「Bernie's Groove」や「New Way of Living」といった楽曲を提供。「News at 11」は同時期にシングルとして発売された。

シングル

映画『バーグラー/危機一髪』関連でリリースされたシングルは、主にスプリット盤であった。

「ダンシング・イン・ザ・シティ」 - "Dancing In The City" / "News At 11"
リリース年: 1987年
レーベル: MCA
上記サウンドトラックからのシングル。A面はベリンダ・カーライルの楽曲で、B面にディスタンスの「News At 11」が収録された。

「タイム・アウト・フォー・ザ・バーグラー」 - "Time Out For The Burglar" / "News At 11"
リリース年: 1987年
レーベル: MCA
こちらもサウンドトラックからのシングル。A面はザ・ジャクソンズの楽曲で、B面にディスタンスの「News At 11」が収録されている。

短命に終わったプロジェクトではあるが、ディスタンスはバーナード・エドワーズとトニー・トンプソンという伝説的なリズム隊が、新たな才能と共にロック/ファンクサウンドを追求した興味深い試みであったと言えるだろう。彼らが残した唯一のアルバムと映画出演は、1980年代後半の音楽シーンの一側面を伝える貴重な記録となっている。

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