ディック・デイル

ディック・デイル（Dick Dale, 1937年5月4日 - 2019年3月16日）は、アメリカ合衆国出身のギタリストであり、本名はリチャード・アンソニー・モンスール（Richard Anthony Monsour）です。彼は、その革新的なギタープレイとサウンドで、サーフミュージックの創始者の一人として広く認知されています。

生い立ちと音楽への目覚め

デイルはマサチューセッツ州ボストンで、レバノン人の父とポーランド人の母の間に生まれました。1954年頃に家族でカリフォルニア州に移住。生来の左利きであった彼は、ギターを始めた当初、右利き用のギターをそのまま逆さまにして演奏していました。この特異な演奏方法が、後に彼の独特なプレイスタイルを確立する要因となりました。

デビューと成功

1958年、ディック・デイル&ヒズ・デルトーンズを結成し、「Woo-Wee Mary」でデビュー。1962年にはファーストアルバムを発表し、「Misirlou（ミザルー）」がヒットしました。1960年代前半には、サーフィン音楽とホットロッド文化の隆盛とともに、数々のシングルをリリースし、人気を博しました。しかし、1960年代後半になると、サーフィン音楽の人気が衰え、レコード会社との契約解除、さらに自身が直腸がんを患うなど、不遇の時代を過ごしました。

復活と再評価

1975年にカムバックシングルを発表。1987年には映画「Back To The Beach」のサウンドトラックでスティーヴィー・レイ・ヴォーンと共演し、「パイプ・ライン」を演奏しました。1993年にはアルバム「Tribal Thunder」をリリースし、音楽シーンに本格的に復帰を果たしました。1994年には、映画『パルプ・フィクション』や『TAXi』シリーズで「ミザルー」が使用され、再び注目を集めました。その後、ザ・サーフコースターズをサポートアクトに迎えて来日公演も実現しています。2006年には、ブラック・アイド・ピーズが「Pump It」で「Misirlou」をサンプリングするなど、ヒップホップ音楽界からも注目されました。

音楽的影響と使用機材

デイルの激しいギターサウンドは、ガレージロックやパンクロックに大きな影響を与えました。ジミ・ヘンドリックスも、彼から影響を受けていたことを公言しています。ステージで使用していたギターは「Beast」と名付けられたフェンダー・ストラトキャスターで、ボディがスパークルゴールドに再塗装され、トーンポットの取り外しやトグルスイッチの増設など、独自の改造が施されていました。フェンダー・カスタムショップからは、彼のシグネチャーモデルである「Dick Dale Stratocaster」が発売され、右利きギタリストでも彼のサウンドを再現できるように、コントロール系やピックアップの角度などが調整されています。また、かつてはフェンダーからディック・デイルモデルのアコースティックギターも発売されていました。

死去

2019年3月16日、カリフォルニア州で死去。81歳でした。晩年は二度目の直腸癌を克服したものの、腎不全や糖尿病などの健康問題に苦しみ、人工肛門の医療費に苦労していたと伝えられています。医師からは演奏活動を止めるように忠告されていたにもかかわらず、生涯現役を貫きました。

ディック・デイルは、その革新的な音楽性と、不屈の精神で、音楽史に名を刻んだ偉大なギタリストです。

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