ディップスイッチ

ディップスイッチ：電子機器設定のための小型スイッチ

ディップスイッチは、電子機器の様々な設定を行うために用いられる、小型で便利なスイッチです。その名称はDual In-line Package switchの略で、集積回路で使われるDIPパッケージと同じ形状の端子を持つことからきています。多くの場合、電子回路基板上に直接実装されます。

ディップスイッチの種類と仕組み

ディップスイッチは、スライドスイッチやプッシュロックスイッチ、ロータリースイッチといった複数の小型スイッチを一つにまとめた構造をしています。スライドスイッチ型では、通常2個から10個程度のスイッチが並んだ形状となっており、それぞれがオン・オフを切り替えることができます。ロータリースイッチ型は、数字が刻印されており、二進数やBCDコードに対応した設定が可能です。

これらのスイッチは、通常、精密ドライバーなどの工具を用いて操作します。人間の指で直接操作できるサイズではないためです。スイッチのオン・オフ状態は、そのまま電子回路の接続の切り替えに用いられる場合もありますが、一般的にはデジタル信号（HighとLow）に変換され、電子機器の電源投入時にファームウェアによって読み取られ、各種機能の設定に利用されます。

ディップスイッチの用途と歴史

かつては、不揮発性メモリの価格が高価だったため、電子機器の基本設定を保存する手段としてディップスイッチが広く利用されていました。パソコン、周辺機器、家電製品、通信機器など、非常に多くの製品でディップスイッチを見ることができました。

しかし、1990年代後半以降、電子機器の小型化・高密度化、操作性の向上、そして不揮発性メモリの低価格化が進むにつれて、ディップスイッチは一般消費者向けの機器から姿を消しつつあります。パソコンでは、BIOS設定画面にその役割が置き換えられました。

それでもなお、ディップスイッチは産業用機器などでは現在も広く使用されています。その理由は、低価格で回路設計が容易であること、そして通電していなくても設定状態を容易に確認できるという点にあります。

ディップスイッチと関連技術

ディップスイッチは、様々な電子機器の設定に用いられてきましたが、特にSCSI（Small Computer System Interface）接続機器においては重要な役割を果たしていました。SCSI規格では、接続された機器ごとに一意のSCSI IDを設定する必要があり、このIDの設定にディップスイッチが用いられていたのです。

現在でも、ジャンパーピンという類似の技術が使用されています。ジャンパーピンは、複数の裸の電極ピンが並んだ構造をしており、ピン同士を短絡させることで機器の設定を変更します。旧式のハードディスクドライブなど、パラレルATA接続を伴う機器で現在も利用されています。

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