ディディモセラス

ディディモセラス（Didymoceras）



ディディモセラスは、ノストセラス科に属する異常巻きアンモナイトの一種であり、その独特の形状から多くの研究者の関心を集めています。特にその螺環は、まるで巻貝のように円錐状に巻かれた特徴を持ち、U字型のフック状構造を形成することで知られています。また、螺環の表面には複数の肋が見られ、それに沿って2列の突起が不規則に配置されています。

形態



ディディモセラスの成長段階は大きく分けて初期、中期、後期とされ、それぞれに異なる形態を示します。成長初期には、比較的緩やかな螺旋または直線的な枝状の構造が観察されます。その後、中期に入ると、螺環は明確な螺旋を描き始め、同じ個体内でも螺環が密接していたり、接触しなかったりする場合が見られます。成長後期においては、これらの螺環が逆向きに巻き、ちょうどU字型を形作るように変化します。このように、形態は成長段階に応じて著しく変化するだけでなく、同種内でも個体ごとの変異が見られる点が興味深いです。特に、塔状構造の高さや螺旋の巻き方向（右巻きか左巻きか）においても、多様な形態が観察されます。加えて、螺環の表面に走る肋のパターンや、その上に生えた突起の形状も、個体ごとに異なる特徴を示します。

産地



ディディモセラスの化石は主にアメリカ合衆国で豊富に見つかります。いくつかの州において多様な化石帯が存在し、特にモンタナ州、ワイオミング州、カンザス州、コロラド州、ニューメキシコ州などで多くの化石が発見されています。Kenedy et al.（2000）による情報では、以下のディディモセラスに関連する化石帯が確認されています：

さらに、テキサス州のBergstrom層や、アーカンソー州のOzan Formation、Annona Chalk、デラウェア州のMount Laurel Sand、ニュージャージー州のWenonah層でも化石が見つかっています。アメリカ以外では、カナダやメキシコを含む北アメリカ大陸や、ドイツ、フランス、スペイン、ポーランドなどのヨーロッパ諸国、さらにはアフリカ大陸（イスラエル、エジプト、マダガスカル、アンゴラ、ナイジェリアなど）でも発見されています。特に、ドイツ北部で見つかるD. polyplocumは、上部カンパニアン階に由来し、フランス南部のビスケー湾地域で見つかるD. cylindraceumはマーストリヒチアン階に属していることが知られています。

日本では、D. awajienseが四国の上部白亜系和泉層群から出土しており、この層群にはDidymoceras cheyennense帯やDidymoceras sp.帯も含まれています。また、和泉層群からはD. morozumii等の別種も報告されており、この二つの種は祖先-子孫関係にあると考えられています。さらに、北海道の蝦夷層群にも分布しており、日高地域で発見されたD. hidakenseは、その地域にちなんで名付けられました。

分類



ディディモセラスは時にノストセラス属の亜属とも見なされますが、独立した属として捉えられることもあります。また、逆に他の属のジュニアシノニムとして見られることもあります。例えば、ボストリコセラス、Cirroceras、Didymoceratoides、Emperocerasなどがその例です。以下は、ディディモセラス属に分類される代表的な種をまとめたものです。

成長に伴い、D. morozumiiとD. awajienseの関係性が示唆され、特にD. awajienseは鳴門市や淡路島から化石として出土するプラビトセラスの祖先型ともみなされています。この一連の研究により、D. morozumiiからプラビトセラスへ至る進化の過程が考察されています。

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