ディーゼル微粒子捕集フィルター

ディーゼル微粒子捕集フィルター（DPF）とは？

ディーゼルエンジンの排気ガスには、粒子状物質（PM）が含まれています。PMは健康への悪影響が懸念されるため、その低減は重要な課題です。ディーゼル微粒子捕集フィルター（DPF）は、このPMを効率的に除去する装置として開発されました。DPFは、排気ガスをフィルターに通し、PMを捕捉することで、排出量を大幅に削減します。

DPFの仕組み

DPFは、基本的にフィルターによって粒子状物質を捕集するシンプルな仕組みです。しかし、フィルターにPMが蓄積すると目詰まりを起こし、機能が低下します。そのため、多くのDPFには、フィルターの目詰まりを解消するセルフクリーニング機能が備わっています。この機能は、フィルターを加熱してPMを燃焼させることで実現されます。

メーカーによって、このセルフクリーニング機能の名称は異なります。例えば、いすゞ自動車ではDPD、日野自動車ではDPR、三菱ふそうトラック・バスではDPF、UDトラックスではUDPCと呼ばれています。

PMの蓄積は、すすだけでなく、エンジンオイルの灰分も原因となります。灰分は燃焼再生では除去できないため、分解清掃が必要となる場合もあります。そのため、DPF装着車向けのエンジンオイルには、灰分を低減する工夫が施されています。また、硫黄分が少ないベースオイルを使用することで、DPFの寿命を延ばす効果が期待できます。

一部のDPFは、触媒と組み合わせることで、一酸化炭素や炭化水素の除去効果を高めています。特に、ジョンソン・マッセイ社が開発したCRT（連続再生式フィルタ）は、酸化触媒を用いて窒素酸化物（NOx）を二酸化窒素（NO2）に変換し、その酸化力を利用してPMを燃焼させる技術として注目を集めました。

フィルターの素材には、耐熱性に優れたセラミックが広く用いられてきましたが、コスト削減のため、ステンレスを採用する製品も登場しています。

DPFの種類

DPFの再生方式には、大きく分けて以下の3種類があります。

1. 連続再生方式: CRTが代表的な方式で、フィルターにPMを捕集しながら同時に再生を行います。外部からのエネルギーを必要としないため、自己再生方式とも呼ばれます。ウォールフロー型フィルターを採用することで、PMの低減率は9割を超える高効率を実現しています。再生には、排気ガスの熱や、ポスト噴射（追加噴射）によって発生する熱を利用します。ただし、燃料噴射による燃費悪化や、エンジンオイルの希釈といった課題も存在します。連続的なエンジン運転であれば自動再生が行われますが、短時間運転の繰り返しでは再生が不十分となり、フィルターが目詰まりを起こす可能性があります。目詰まりが進むと警告灯が点灯し、手動再生が必要となる場合があります。手動再生は、エンジン回転数を上げて排気温度を上昇させる方法で行われ、数分から数十分の時間を要します。

2. 間欠再生方式: 排気圧力センサーでフィルターの目詰まりを検知し、自動的に新しいフィルターに切り替えて再生を行う方式です。再生時には電気ヒーターでPMを燃焼させます。エンジンの運転状態に左右されずに再生できる利点がありますが、複雑な装置と大容量のバッテリーが必要となるため、大型車への搭載が中心です。酸化触媒を搭載しないため、CO、HC、NOxの低減効果はありませんが、軽油の硫黄分による影響を受けにくいという特徴があります。手動再生を行うタイプもあり、装置は小型で簡素ですが、走行中は再生できないため、走行可能距離が短くなるという欠点があります。

3. 添加剤再生方式: 燃料にセリアなどの触媒を添加することで、PMの酸化を促進し再生を行う方式です。装置がシンプルで安価ですが、触媒を定期的に添加する必要があります。

DPFの歴史と今後の展望

DPFは、2000年代初頭の東京都の排ガス規制条例をきっかけに、日本において注目を集めました。その後、自動車排出ガス規制の強化に伴い、大型トラック・バスへの搭載が標準化されました。EUでも、ユーロ5、ユーロ6規制により、ディーゼル車へのDPF装着が義務付けられました。

近年は、DPF不要の車両開発も進められています。例えば、ジメチルエーテル（DME）を燃料とするトラックなどが開発されています。

さらに、世界的にはディーゼル車を含む内燃機関車の廃止に向けた動きが加速しており、フランス、イギリス、ドイツ、スウェーデンなどでは、ガソリン・ディーゼル車の販売終了時期が設定されています。産業機械においても、排ガス規制の強化に伴い、DPFなどの排気後処理装置の導入が進んでいます。

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