デイヴィッド・ガーネット

デイヴィッド・ガーネット（1892年 3月9日 - 1981年2月17日）は、20世紀イギリスを代表する作家の一人であり、当時の主要な知的・芸術的集団であったブルームズベリー・グループの中心メンバーでもありました。

生涯

彼は作家のエドワード・ガーネットと著名なロシア文学翻訳者であるコンスタンス・ガーネットの一人息子として、ブライトンに生まれました。幼少期にはウサギの毛皮でできた特別なコートを着ていたことから、親しい友人たちからは「バニー」（Bunny）という愛称で呼ばれていました。この愛称は生涯にわたって彼とともにありました。

王立協会で植物学を専攻していましたが、第一次世界大戦が勃発すると、彼は良心的兵役拒否を選択しました。戦場へ赴く代わりに、戦争によって苦しむ人々を救済する活動に身を投じました。戦後、彼はロンドンの大英博物館近くで友人と共に書店を経営し、さらにフランシス・メネルとともにナンサッチ・プレスという出版社を設立するなど、文学の普及にも貢献しました。

私生活では、イラストレーターのレイチェル・マーシャルと結婚し、二人の息子をもうけました。長男のリチャードも後に作家として活躍しました。しかし、レイチェルは1940年に乳がんでこの世を去りました。

ガーネットは基本的に異性愛者でしたが、ブルームズベリー・グループの画家ダンカン・グラントとは一時的に同性愛関係を持っていたことが知られています。特に特筆すべきは、1918年12月25日にダンカン・グラントと画家ヴァネッサ・ベルの娘、アンジェリカが誕生した際に立ち会ったことです。その時、彼は後に「彼女が二十歳になったら結婚したい。その時私は四十六歳だ。これは恥ずべきことだろうか」という衝撃的な言葉を日記に書き残しています。この言葉が現実となり、24年後の1942年5月8日、46歳となっていたデイヴィッドは、20歳になったアンジェリカと結婚しました。

アンジェリカとの間には四人の娘が生まれました。長女のアマリリスは女優に、次女のヘンリエッタはデイヴィッドの亡き妻レイチェルの甥であるリットン・パートリッジと結婚し、デイヴィッドとダンカンの遺産を相続しました。三女のネリッサは芸術家となり、四女のフランセスは農業に従事しました。

アンジェリカとの離婚後、デイヴィッドはフランスへと移り住みました。その後も著作活動を続けながら、残りの人生をフランスで過ごしました。

著作物

デイヴィッド・ガーネットの作品は、独特の幻想性や革新的な形式で知られています。中でも代表作とされるのが、短篇小説の『狐になった奥様』（Lady into Fox, 1922年）です。この作品は、突然狐に変身してしまった妻を描き、そのシュールな設定と簡潔で美しい文体が高く評価され、彼に大きな名声をもたらしました。他にも、『動物園に入った男』（A Man in the Zoo, 1924年）、『水夫の帰郷』（The Sailor's Return, 1925年）、『イナゴの大移動』（The Grasshoppers Come, 1931年）、『アスペクツ・オブ・ラブ』（Aspects of Love, 1955年）などの小説や短篇集を発表しています。

小説以外にも、自伝として『黄金のこだま』（The Golden Echo, 1953年）を含む三部作を執筆したほか、T.E.ロレンスやジョン・ゴールズワージーなどの書簡集の編集、アンドレ・モーロワの翻訳なども手掛けました。その著作は多岐にわたり、評論や戦記なども含まれています。

彼の作品のいくつかは日本でも翻訳されており、『動物園に入った男』、『愛のさまざま』、『狐になった人妻』、『アスペクツ・オブ・ラブ』などが紹介されています。河出書房新社からは「ガーネット傑作集」として主要作品がまとめられています。

デイヴィッド・ガーネットの生涯と作品は、20世紀前半のイギリス文学界におけるユニークな存在として、現在も多くの人々に記憶されています。

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