デキシーランド犬

デキシーランド犬：夢を奏でる小さな犬の物語

1954年、MGMによって制作されたテックス・アヴェリー監督作品『デキシーランド犬』（原題：DIXIELAND DROOPY）は、貧しくもデキシーランド・ジャズを愛する犬、ドルーピーの物語です。彼は廃墟のような家で暮らしながら、ハリウッド・ボウルの舞台で指揮をするという大きな夢を抱いていました。

しかし、世間の流れはスローテンポな音楽に向いており、ドルーピーの情熱は理解されません。愛用のレコードを家でかければ隣人に怒鳴られ、カフェや遊園地などでかけても追い出される日々が続きます。そんなある日、レコードを壊して悲しみに暮れるドルーピーの耳に、軽快なデキシーランド・ジャズの演奏が飛び込んできます。それは、ピーウィー・ラント率いるノミのジャズバンドによる演奏でした。

これはドルーピーにとって絶好のチャンスです。彼は演奏会場のテントに忍び込み、犬とノミの意外な親和性を利用して、バンドを仲間に加えます。しかし、バンドを巡って興行主とドタバタな追いかけっこを繰り広げることに。逃げ込んだ先は、なんと犬嫌いの社長が経営する芸能事務所でした。「ワン、ツー、スリー！」と社長がカウントダウンする中、ドルーピーのしっぽに隠れていたノミのジャズバンドが演奏を始めます。

驚くべきことに、社長はデキシーランド・ジャズを理解しており、ドルーピーの才能を見抜きます。「デキシーランド犬、これはいけるぞ！」と興奮した社長は、ドルーピーを「音楽の大天才」ジョン・ペティボーンとして売り出し始めます。ドルーピーは、ノミのジャズバンドと共に、アメリカンドリームを掴み、念願のハリウッド・ボウルの舞台に立つことになります。

この作品では、ドルーピーの普段とは少し異なる顔が見られます。彼は、貧しいながらも夢を諦めない、ひたむきな姿を見せてくれます。ノミのジャズバンドも魅力的で、リーダーのピーウィー・ラントによる軽妙なナレーションも作品を盛り上げます。そして、作品全体を彩る「タイガー・ラグ」等のジャズ音楽は、ドルーピーの情熱をさらに引き立てています。

『デキシーランド犬』は、ドルーピーの新たな魅力と、軽快なジャズ音楽、そしてアメリカンドリームというテーマが融合した、心温まるアニメーション作品です。偶然と才能、そして少しの勇気が、ドルーピーを成功へと導きます。この作品を通じて、夢を持つことの大切さ、そして周りの人々との出会いによって人生が大きく変わる可能性を感じることができるでしょう。

主な登場人物

ドルーピー（ジョン）： デキシーランド・ジャズを愛する貧しい犬。持ち前の明るさと行動力で、夢を叶える。
ノミのジャズバンド： ドルーピーの夢を共に叶える、個性豊かなノミたちによるジャズバンド。
ジャズバンドの興行主： ノミのジャズバンドを巡り、ドルーピーと騒動を起こす人物。
芸能事務所の社長： 犬嫌いの社長だが、ドルーピーの音楽的才能を見抜くキーパーソン。

スタッフ

監督：テックス・アヴェリー
制作総括：フレッド・クインビー
アニメーション制作：マイケル・ラー、グラント・シモンズ、ウォルター・クリントン
脚本：ヘック・アレン
背景：ジョー・マンテル
音楽：スコット・ブラッドリー

日本での放送と収録ソフト

TBS版の『トムとジェリー』内で放映され、VHS、DVDでも収録されています。

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