デキストラン

デキストラン：多様な用途を持つグルコース多糖類

デキストランは、グルコースが多数結合してできた多糖類の一種です。α-1,6-グリコシド結合を多く含むことが特徴で、デンプンやセルロースとは異なり、冷水にも溶けやすいという性質を持っています。

デキストランの発見と歴史

1800年代初頭、製糖工場ではシロップ中に粘性の高い物質が生成し、精製工程の妨げとなっていました。この物質が微生物の作用によって生成されることが1861年に確認され、1874年にはグルコースの重合体であることが判明し、「デキストラン」と命名されました。

代用血漿としてのデキストラン

第二次世界大戦中、スウェーデンの研究グループは血漿の凍結乾燥技術を研究していました。当時、代用血漿としてはアラビアゴムなどが使用されていましたが、免疫反応を引き起こすなどの問題がありました。

製糖会社からの依頼で、研究グループは甜菜抽出物の粘性物質の調査を行いました。その結果、この物質が細菌によって生成されたデキストランであることが判明しました。動物実験の結果、デキストランは生体適合性に優れ、免疫反応を引き起こさないことが確認されました。このことから、デキストランは代用血漿として有望であると判断され、1951年には医薬品として商品化されました。

デキストランの多様な用途

デキストランは、その優れた性質から、医療分野だけでなく、様々な分野で利用されています。

医療分野: 代用血漿剤（デキストラン70、デキストラン40）、血液増量剤、酸素安定化剤など
工業分野: 写真用フィルム添加剤、X線フィルム添加剤、工業用原料など
化粧品分野: 保湿剤など
食品分野: 増粘安定剤、飴など

デキストランの分子量によって、用途が異なります。高分子デキストランは試薬など、低分子デキストランは医薬品や化粧品などに使用されます。

デキストランと類似物質

デキストランはデキストリンと類似した物質ですが、化学構造や性質に違いがあります。また、歯垢にも含まれていることが知られています。

まとめ

デキストランは、製糖工場での偶然の発見から、医療分野や工業分野で広く利用されるようになった物質です。その生体適合性と多様な物性から、今後も様々な分野での応用が期待されます。 デキストランの研究は、今後も進展し、新たな用途が発見される可能性があります。

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