デコイ (兵器)

デコイの概要

デコイ（decoy）とは、軍事において敵を混乱させ、本来の目標を隠すための装備全般を指します。基本的には、敵に偽の目標を提示することにより、攻撃や観測を誘導することを目的としています。この概念は元々、鳥猟に使われていた木彫りのダミーから派生したものであり、その発展型が今日の軍事技術にも見られます。

デコイの分類

デコイは、以下の4つの基準で分類されます。
1. 動作領域
- 電磁波（例：レーダー、赤外線）
- 音波
2. 受動/能動性
- 受動式（パッシブ）：敵の信号を増幅するなどして反応
- 能動式（アクティブ）：自ら信号を発生
3. 任務
- 誘惑（seduction）：敵の攻撃を本当の目標からデコイに向けさせる
- 飽和（saturation）：複数の目標を提示し、敵の対応能力を超えるようにする
- 輻射強制（detection）：敵がデコイを攻撃することで位置が分かる状況を作り出す
4. 装備方式
- 使い捨て型
- 曳航型
- 自由運動型

使い捨て型デコイ

使い捨てデコイは特に歴史的に古く、可視光帯域で敵を欺くために広く利用されてきました。例えば、日本の戦国時代における楠木正成の藁人形の例が有名です。また、現代戦では戦車や航空機のハリボテが多く用いられています。特にエルヴィン・ロンメルやバーナード・モントゴメリーの戦闘において、このような手法は多くの戦果を生んでいます。

さらに、空挺部隊がパラシュート降下する際に、デコイを同時に投下する「パラダミー」という戦術も存在します。これにより、敵の狙撃から本物の兵士を守る効果があります。第二次世界大戦中に広まったこの技術は、現在も訓練目的で使われています。

赤外線および電波帯域デコイ

赤外線帯域でよく知られているのがフレアです。フレアは赤外線センサーに対し、自らの熱を発生させて敵のミサイルを引き寄せる役割を担います。一方、電波領域では古くからチャフが利用されています。チャフは、反射する金属粒子で構成されており、レーダーを混乱させるために使われます。弾道ミサイルの一種MIRVデコイも、攻撃を分散させるために利用されます。

曳航型デコイ

曳航型デコイは戦闘機や艦船により曳かれ、受動的または能動的な手法で敵を迷わせるために用いられます。特にAN/ALE-50|AN_ALE-50やAN/SLQ-25は、その代表例です。これらは特に音波デコイとして有名です。曳航型は、敵からの攻撃を逸らすだけでなく、味方の主要兵器を守るためにも使用されます。

自由運動型デコイ

自由運動型デコイは、自律的に行動することが可能です。無人兵器としても使用され、航空機や艦船から投下されます。マクドネル社のクェイルや、レイセオン社のADM-160 MALDなどがその例です。特に、音波領域のデコイは、魚雷発射管から発射されることが多く、敵の識別を困難にする役割も担っています。

まとめ

デコイの技術は、古代から現代に至るまで多様な形で進化してきました。戦争において、デコイは敵を欺く重要な戦術の一つとして活躍しています。その利用は、物理的な形状から、電子的な信号発生まで多岐にわたります。今後もこの技術は進化を続け、戦術の重要な要素であり続けるでしょう。

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