デザートクラウン

デザートクラウン：栄光と悲劇の競走馬物語

2019年3月2日生まれのデザートクラウンは、イギリスを代表する競走馬として、その短い生涯に数々のドラマを残しました。父はキングジョージ6世＆クイーンエリザベスステークス優勝馬ナサニエル、母はデザートベリーという、錚々たる血統を受け継いでいました。G3競走プレミアカップ優勝馬フライングサンダーを半兄に持ち、その血統背景には、プリンスオブウェールズステークス勝ち馬バイワードや、アメリカでG1を4勝したプロヴィソといった名馬の名も連なります。

2020年10月、タタソールズ社10月1歳セールで落札され、ドバイの実業家サイード・スハイル氏の所有馬となり、名伯楽マイケル・スタウト調教師の厩舎に入りました。

2歳時は1戦1勝と順調にデビューを飾り、3歳シーズンにその真価を発揮します。ヨーク競馬場で行われたダンテステークスでは、2000ギニー8着馬ロイヤルパトロネージと共同1番人気に支持され、後方から鋭く追い上げて3馬身1/4差の圧勝劇を演じます。この勝利で、スタウト調教師はダンテステークスの最多勝記録に並びました。

そして迎えたダービーステークス。エリザベス女王即位70周年を祝うプラチナジュビリーの真っ只中、デザートクラウンは3.5倍の1番人気に支持されました。レースでは抜群のスタートを決め、直線で突き抜ける圧倒的な走りで、2馬身1/2差をつけて優勝。無敗でのダービー制覇は、2015年のゴールデンホーン以来の快挙でした。スタウト調教師は12年ぶり6度目のダービー制覇、鞍上のリチャード・キングスコート騎手はダービー初制覇を飾ります。

ダービー制覇後、デザートクラウンはキングジョージ6世＆クイーンエリザベスステークスを目標にされましたが、軽度の脚部不安により回避。その後も凱旋門賞やチャンピオンステークスへの出走も検討されましたが、結局シーズン全休となり、翌年春のドバイシーマクラシックでの復帰が示唆されました。

4歳シーズン、デザートクラウンはドバイシーマクラシックを回避し、復帰戦としてG3ブリガディアジェラードステークスに出走するも2着に敗れます。その後はプリンスオブウェールズステークス、キングジョージ6世＆クイーンエリザベスステークス、インターナショナルステークスと、立て続けに故障により出走を回避します。8月20日の調教中に球節の故障を発症し手術を受けましたが、残念ながら回復の見込みはなく、2023年10月23日、安楽死の処置がとられました。

デザートクラウンの短い競走生活は、華々しい勝利と、惜しまれる早すぎる引退という、多くのファンに感動と悲しみを与えました。その輝かしい戦績と、その生涯は、競馬史に永遠に刻まれることでしょう。

競走成績（抜粋）


血統表

(※詳細な血統表は、Racing Post等で確認できます)

脚注

* 詳細な競走成績は、Racing Post、BHAおよびJRA-VAN Ver.Worldをご参照ください。

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