デジタルモンスターVer.S 〜デジモンテイマーズ〜

デジタルモンスターVer.S ～デジモンテイマーズ～

1998年9月23日にバンダイからセガサターン向けに発売された『デジタルモンスターVer.S ～デジモンテイマーズ～』は、それまで携帯型育成ゲームとして展開されていたデジタルモンスターシリーズにとって、初めてのコンシューマーゲーム作品となりました。このタイトルは、2001年に放送された同名のテレビアニメ『デジモンテイマーズ』とは物語上の関連性はありません。

ゲームの概要

本作は、携帯ゲーム版では深く描かれなかった「デジタルモンスター」の世界観を表舞台に打ち出した作品です。舞台となるのは、インターネットが高度に発展し、ネットワーク社会が確立された近未来。この世界では、謎のコンピュータプログラムである「デジモン」が広く流通しており、ペットとして飼われたり、便利なツールとして活用されたり、あるいはプログラムとしての性能を競う大会に出場させられたりと、社会の中で多様な役割を果たし、独特の需要と供給を生み出している様子が描かれます。ゲームに登場するキャラクターは、アメコミを意識したデザインが採用されており、外国人キャラクターが多く登場します。

ゲームプレイは、コンピュータのデスクトップ画面を模したインターフェースや、架空のインターネットブラウザ「DiGiMON NET」を活用して進行します。プレイヤーの主な目的は、様々な種類のデジモンを育成し、ゲーム内の競技で勝利してメダルを集めること。さらに、ゲームを進める中で特定の条件を満たすと、コンピュータネットワークに侵入してくる悪質なハッカーたちが現れ、彼らとのデジモンバトルに勝利して撃退するというイベントも発生します。

システムの特徴

デジモンの育成は、基本的な流れこそ携帯ゲームシリーズに準じていますが、いくつかの独自の要素が加わっています。

育成システム

時間経過: ゲーム内に独自の時間が流れており、プレイヤーはこの時間の進行速度を調整することができます。
育成フォルダ: デジモンは「育成フォルダ」と呼ばれる檻の中で育てられます。フォルダ内部には、それぞれのデジモンのバージョンに合わせたデジタルワールドを模した背景が表示されます。育成がおろそかになると檻が壊れ、デジモンが逃げ出してしまうことがあるため、「リペア」アイテムでの修復が必要です。
NEWデジタマ: 成長期と成熟期のデジモンを人工的に合体させることで生まれる特殊なデジタマです。組み合わせるデジモンの相性によって、本作で初めて登場するオリジナルデジモンを含む様々なデジモンが誕生します。誕生するデジモンは成熟期ですが、その後の育て方によって規則的あるいは不規則的な完全体へと進化します。
デジトレ: デジモンをトレーニングさせることで、筋力、素早さ、賢さなどのパラメータを上昇させます。トレーニングメニューには、スパーリング、サンドバッグ、縄跳びなど、まるでボクシングやプロレスの選手が行うような種類が用意されています。

ネットワークシステム

ゲーム内では、現実のコンピュータを思わせるデスクトップ画面が再現されており、オリジナルのOS「DIGI OS’98」やブラウザ「DiGiMON NET」が存在します。

DIGI OS’98: ネットワーカーたちが利用するOSです。
SYSTEM-2000: 時間速度の設定やセーブ機能などを管理します。
DiGiMON NET: ゲーム内のインターネットブラウザです。ここから様々なウェブサイトにアクセスできます。
デジモンワールド: 近未来のデジタルモンスター公式サイトという設定。メールの確認や、他のデジモン関連サイトへのリンク集があります。
メール: 研究者や他のテイマーからメールが届き、閲覧や選択肢を選んでの返信が可能です。
デジ研: デジモン研究者が運営するサイト。デジモンに関する最新ニュースなどが閲覧できます。
ボタモン熟睡中: ボタモンの眠りをハエから守るミニゲームです。
電脳怪物雑貨店: インターネット通販サイトとして機能します。エサや回復アイテム、タマゴなどを購入でき、特定の時間帯にはタイムサービスも開催されます。商品は「エサ」「クスリ」「アイテム・タマゴ」「システムアイテム」のカテゴリに分かれ、価格も「高い」「普通の」「安い」の3段階があります。アイテムはプログラムとして扱われ、エサなら「.eat」のような拡張子が付いています。
検索: 特定のアドレスを入力すると、デジモンがインターネット空間を探索し、アイテムを発見して持ち帰ります。探索できるエリアは全45ヶ所あり、場所によって検索にかかる料金や入手できるアイテムが異なります。
バーチャルコロシアム: ネットワーク上に設けられたデジモンバトルのためのサイトです。デジタルワールドを模した島のようなプログラム空間に、「GRASS」「SKY」「WATER」「CAVE」「ARENA」の5つの対戦エリアがあり、入場して他のプレイヤーとバトルできます。

登場キャラクター

本作では多くのキャラクターが初めて登場しました。デジモンやハッカーには公式イラストも存在します。

デジモン: 携帯ゲーム版のVer.1からVer.4に登場した56体に加え、本作で初めて登場したオリジナルデジモンが数体登場します。オリジナルデジモンには、成熟期のゴリモンやテイルモン、完全体のサーベルレオモンやエンジェウーモンなどがいます。
ネットワーカー: ゲームの世界でデジモンを利用する人々全般を指す言葉です。ペットとして愛でる者、バトルに使う者、悪事に利用する者など様々で、デジモンを人工的に開発・改造する者も存在します。
デジタルモンスター研究所: ゲーム内に登場するデジモン研究機関です。
テイマー: デジモンを育成し、バトルさせる人間のことです。パソコンなどのコンピュータを媒体としてデジモンを扱う人を指し、年齢や性別は問いません。この「テイマー」という言葉は本作で初めて使用され、その後のシリーズ全体で共通の設定となりました。すべてのテイマーは、その道の最高峰である「トップテイマー」を目指すことを目標としています。
主人公: オープニングに登場する、パーカーやキャップといったストリート系の服装をした若者です。デジタルモンスター研究所の職員の手違いで送られてきたデジモンプログラムを受け取ったことがきっかけで、テイマーとしての道を歩み始めます。
ハッカー: ゲームの解説書では「悪質なハッカー集団」とされています。彼らは集団のシンボルとして、放射能標識に似た髑髏のマークを衣服やベルトなどに付けており、一部のデジモンにもこのマークが刻印されています。登場するハッカーの中には、読者投稿を元に作られたキャラクターもいます。例えば、ショッカー戦闘員を模した「ザコハッカー」、金銭に執着する「マネーハッカー」、もんざえモンを溺愛する「マッドサイエンティスト」、神聖系デジモンを使う「スーパーヒーローハッカー」、土曜深夜に出現する「ファンキーDJハッカー」、海賊風の容姿をした「海賊ハッカー」、組織のリーダーである「女ボス」、そして実在の人物をモデルにした「デジモンキー」などがいます。

他のシリーズとの関連性

デジタルモンスターシリーズは、同じキャラクターや設定が作品の枠を超えて登場するスターシステムを採用しています。本作で初めて存在が明らかになったハッカーたちも、後のデジモンシリーズの基本設定において、デジモンの製造などに関与した存在として言及されることがあります。ただし、彼らの具体的な姿や分類、個人名が詳細に描かれているのは現状では本作に限られており、他のシリーズでは「〇〇（国名など）のハッカー」といった形で説明されるにとどまっています。

ハッカーとの関連を示す、放射能標識に似た髑髏のマークは、本作のみならず他のシリーズに登場する多くのデジモンにも刻印されています。例えば、メガドラモン、シャコモン、ファントモン、ピノッキモン、そしてベルゼブモンなどが挙げられます。ただし、アニメ『デジモンテイマーズ』に登場するベルゼブモンは同名ですが、本作との直接的な接点は明確ではなく、マークの形状も一部異なります。

本作は、デジタルモンスターという世界観を、携帯ゲームの枠を超えて深く掘り下げ、後のシリーズにも影響を与えた意欲的な作品と言えるでしょう。

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