デジタル・インターミディエイト

デジタルインターミディエイト（DI）とは

デジタルインターミディエイト（Digital Intermediate, 略称：DI）は、映画制作における重要なプロセスであり、撮影された映像をデジタル化し、色彩やその他の映像特性を調整する作業を指します。このプロセスは、映画館での上映前に映像を最終的な形に仕上げるために不可欠です。DIは、テレシネ変換よりも高解像度かつ広色域なデジタル機材のみを使用し、フィルム映像の持つ潜在能力を最大限に引き出すことを目指します。

DIのプロセス

DIのプロセスは、主に以下のステップで構成されます。

1. フィルムスキャン: フィルムで撮影された映像は、まずフィルムスキャナーによってデジタルデータに変換されます。この際、フィルムの微細なディテールや色情報を可能な限り忠実に捉えることが重要です。
2. デジタル色彩調整: スキャンされたデジタル映像に対して、色彩の調整（カラーコレクション、カラーグレーディング）が行われます。この段階では、映像全体のトーンやコントラスト、特定の色域の強調など、作品の意図に沿った表現が追求されます。ルックアップテーブル（LUT）などの技術が活用され、効率的かつ高品質な色調整が実現されます。
3. 映像の調整: 色彩調整に加えて、映像のシャープネスやノイズの軽減など、画質の向上が図られます。
4. デジタル出力: 調整された映像は、デジタル映写機での上映、あるいはフィルムレコーダーでフィルムに出力されます。近年ではデジタル映画カメラで撮影し、デジタル映写機で上映する、全デジタルプロセスが増加しており、フィルムへの出力による画質劣化が解消され、高品質な映像制作が実現されています。

DIの歴史と進化

従来のフィルム編集では、撮影されたネガフィルムからインターミディエイトと呼ばれる複製フィルムを作成し、映画館に配給していました。カラーグレーディングは、赤、緑、青の3原色を調整することで行われていました。DIの登場により、デジタル環境での柔軟かつ精密な色彩調整が可能となり、映像表現の幅が大きく広がりました。

DI関連のソフトウェアとハードウェア

DIのプロセスでは、専門的なソフトウェアとハードウェアが使用されます。以下に主な製造会社と製品を挙げます。

ARRI: フィルムレコーダーとスキャナーの製造。
ASSIMILATE: スクラッチの製造。
Autodesk: Autodesk Lustreの開発。
Celco: フィルムレコーダーの製造。
DFT Digital Film Technology: フィルムレコーダーの製造。
Grass Valley (スネル): カラーグレーディング。
ブラックマジックデザイン: Cintel(フィルムスキャナ)、DaVinci(グレーディング)の製造。
Digital Vision: カラーグレーディング、グレイン軽減。
FilmLight: Northlight(フィルムスキャナ)、Baselight(グレーディング)の製造。
Lasergraphics: フィルムスキャンとレコーディング。
Pandora Technology: カラーグレーディング。
Moving Image Technologies: デザイン、統合とサービス。
MTI: デジタルインターミディエイト ハードウェアとソフトウェア。
IMAGICA Lab.: IMAGICAウェストでフィルムスキャナー(Cine Vivo)を使用。

DIの重要性

DIは、映画制作において、映像の品質を決定づける重要な役割を果たしています。フィルム撮影からデジタル上映への移行期において、DIは両者の架け橋となり、クリエイターの表現意図を最大限に引き出すための不可欠なツールとなっています。また、全デジタル化の進行に伴い、DIの重要性はますます高まっています。

参考文献

「ARRI デジタルインターミディエイト・ワークショップ第一講座」ARRI デジタルインターミディエイト・システムプロダクトマネージャ シビレ・マイヤー・著
「ARRI デジタルインターミディエイト・ワークショップ第二講座」デジタルインターミディエイト・プロセスの利点 カラリスト/コンサルタント　フロリアン・”ウッツィ”・マルティン・著
「ARRI デジタルインターミディエイト・ワークショップ第三講座」The Digital Age of Film ARRI・デジタル ・著
ARRI 4K+システム「映画映像の基礎理論」ARRI・デジタル　ハンス・キーニング博士・著

これらの情報から、DIが映画制作において如何に重要な役割を果たしているかを理解することができます。

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