デス・トランス

『デス・トランス』（DEATH TRANCE）

2006年に劇場公開された日本の映画作品です。本作は、『VERSUS』や『SHINOBI』でアクション監督を務めた下村勇二がメガホンを取り、主演は同じく『VERSUS』や『ビー・バップ・ハイスクール』などに出演してきたアクション俳優の坂口拓が務めました。

物語の概要

混沌とした戦乱の時代を舞台に、百年以上にわたり東願寺が秘蔵してきた謎の棺を巡る壮絶な物語が展開されます。この棺は開ければ世界が破滅すると伝えられる一方、「西の禁断の森」で開くとどんな願いも叶うという相反する噂が囁かれていました。寺の厳重な守りを破り、この棺を強奪した男がいます。その名はグレイヴ。人間離れした戦闘能力を持つ彼は、「この世で最も強い相手と戦うこと」というただ一つの目的のために、棺を引きずりながら禁断の森を目指します。

彼の行く手には、棺を取り戻そうとする東願寺の僧侶リュウエンや、森の中で出会った謎の拳銃使いシド、そして正体不明の女剣士ユーリなど、様々な追跡者や刺客が次々と現れます。それぞれの思惑が交錯する中、棺を巡る果てしない戦いの旅が始まります。果たして、棺が開かれた時、世界は破滅を迎えるのか、あるいは新たな希望が生まれるのか、魔力に引き寄せられた者たちの運命が描かれます。

製作とキャスト

本作の監督は下村勇二、主演は坂口拓が務め、坂口はアクション監督補佐も兼任しています。脚本は加藤淳也、藤田真一、千葉誠治、下村勇二の共同執筆。アクション監督は小原剛と坂口拓が担当し、迫力あるアクションシーンを創出しました。撮影と編集の一部は藤田真一が手がけ、美術やキャラクターデザイン、衣装は武内香菜が担当し、作品独特の世界観を構築しています。

主要キャストとして、主人公グレイヴを坂口拓が演じ、彼を追う僧侶リュウエンには須賀貴匡、謎の銃使いシドには剣太郎セガール、女剣士ユーリには竹内ゆう紀が名を連ねています。その他、破壊の女神を藤田陽子、大僧正を樋浦勉が演じるなど、個性豊かなキャストが集結しました。

作品の特徴とエピソード

『デス・トランス』は、その独特な世界観とアクションが高く評価されました。約5分の短編として製作された予告編がカンヌ国際映画祭で上映されると、その衝撃的な内容に世界中のバイヤーが注目し、アメリカ、フランス、ドイツなど多数の国での劇場公開が決定しました。また、2006年のブリュッセル国際ファンタスティック映画祭に正式招待され、観客から熱狂的な支持を得ました。

アクション面では、主演の坂口拓が長年温めてきた企画であり、「マジ当てアクション」の実現を目指し、念願だった顔面への打撃にも挑戦しています（安全対策も講じられています）。しかし、撮影初日には冒頭の殺陣シーンで左肩を脱臼するというアクシデントもありました。坂口自身、「地獄甲子園でも脱臼したことがあるので脱臼癖がついたのかもしれない」と語っています。

監督の下村勇二は、本作のゴシック的な美術やヴィジュアル系を思わせるメイクについて、ティム・バートンやジャン・ピエール・ジュネといった監督の世界観にアクションを融合させたかったとインタビューで語っており、時代劇という枠にとらわれないアプローチがなされています。劇中では、下村監督が大ファンであるというロックバンドDir en greyの楽曲が4曲使用され、特にエンディングテーマ「CLEVER SLEAZOID」は、発売前から惚れ込み、「この曲以外ありえなかった」と語るほど強い思い入れがあったことが明かされています。

これらの要素が複合的に絡み合い、『デス・トランス』は国内はもとより、海外でもカルト的な人気を誇る異色の日本映画として知られています。

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