デナム男爵

デナム男爵家：英国貴族の系譜

デナム男爵位は、英国の世襲貴族爵位であり、ボウヤー家によって継承されています。その歴史は、17世紀半ばにまで遡り、幾多の準男爵位と複雑に絡み合いながら、現代に受け継がれています。本稿では、デナム男爵家の歴史と、その家系図、ならびに現在に至るまでの爵位の変遷について詳細に解説します。

ボウヤー家の起源と準男爵位

ボウヤー家は、少なくとも16世紀から続く由緒ある家系です。その祖ウィリアム・ボウヤーは、17世紀に庶民院議員を務めた政治家でした。1660年、彼はバッキンガムシャー州デナム・コートの準男爵に叙爵され、ボウヤー家の歴史に新たな章が刻まれました。以降、代々、この準男爵位はボウヤー家によって継承されていきました。

5代準男爵サー・ジョージ・ボウヤーは、イギリス海軍の提督として活躍し、フランス革命戦争における重要な海戦にも参加しました。その功績により、1794年にはさらに別の準男爵位を授与されています。また、6代目、7代目のジョージも庶民院議員を務めるなど、ボウヤー家は代々政治の世界で活躍しました。

男爵位への叙爵と家系の分岐

3代準男爵の子孫にあたるサー・ジョージ・ボウヤーは、1933年に新たに準男爵位を得、さらに1937年には、バッキンガムシャー州ウェストン・アンダーウッドのデナム男爵に叙爵されました。これは、ボウヤー家にとって大きな転換期であり、男爵位と複数の準男爵位が併存することになります。初代デナム男爵は、国立ドッグレース協会理事を務め、オックスフォード・スタジアムの建設にも貢献しました。

初代男爵の死後、爵位は彼の息子バートラムが継承しました。一方、本家筋にあたる9代準男爵は嗣子なく没したため、1794年に創設された準男爵位は廃絶しました。しかし、1660年創設の準男爵位はバートラムが継承したため、デナム男爵位には2つの準男爵位が従属する形となりました。

現代のデナム男爵と爵位継承

2代デナム男爵バートラムは、1999年の貴族院法制定後も貴族院に籍を置く世襲貴族の一人でした。2021年にバートラムが亡くなると、その息子リチャードが爵位を継承し、現在に至っています。現在の第3代デナム男爵リチャードは、デナム男爵位に加え、2つの準男爵位を保有しています。

一族の邸宅は、バッキンガムシャー州ウェストン・アンダーウッド近郊のラウンドリー・コテージです。爵位の推定相続人は、現当主の弟ヘンリー、そしてその子のエドモンドとなっています。

系譜一覧

デナム・コートのボウヤー準男爵 (1660年創設)
初代: ウィリアム・ボウヤー (1612-1679)
2代: ウィリアム・ボウヤー (1639-1722)
3代: ウィリアム・ボウヤー (1710-1767)
4代: ウィリアム・ボウヤー (1736-1799)
5代: ジョージ・ボウヤー (1739-1800) (1794年にラドリーの準男爵位創設)
6代/2代: ジョージ・ボウヤー (1783-1860)
7代/3代: ジョージ・ボウヤー (1811-1883)
8代/4代: ウィリアム・ボウヤー (1812-1893)
9代/5代: ジョージ・ヘンリー・ボウヤー (1870-1950) (ラドリーの準男爵位廃絶)
10代/2代デナム男爵: バートラム・スタンリー・ミトフォード・ボウヤー (1927-2021)
11代/3代デナム男爵: リチャード・グレンヴィル・ジョージ・ボウヤー (1959-)

ウェストン・アンダーウッドのボウヤー準男爵 (1933年創設)
初代: ジョージ・エドワード・ウェントワース・ボウヤー (1886-1948) (1937年にデナム男爵叙爵)

デナム男爵 (1937年創設)
初代: ジョージ・エドワード・ウェントワース・ボウヤー (1886-1948)
2代: バートラム・スタンリー・ミトフォード・ボウヤー (1927-2021)
* 3代: リチャード・グレンヴィル・ジョージ・ボウヤー (1959-)

この系譜からわかるように、デナム男爵家は、複雑な爵位継承の歴史を持ち、現在もその伝統を継承しています。

もう一度検索