デビッド・マクアダム

デビッド・ルイス・マクアダム：色彩科学における先駆者

デビッド・ルイス・マクアダム（1910年7月1日 - 1998年3月9日）は、アメリカ合衆国の物理学者、色彩科学者として知られています。彼は、カラリメトリ、色識別、カラー写真およびテレビジョン技術の発展に多大な貢献を果たし、色彩科学分野に革命を起こした人物の一人です。1983年には国際色彩学会から権威あるジャッド賞を受賞しています。

生い立ちと教育

ペンシルベニア州で生まれたマクアダムは、アッパーダービー高校卒業後、リーハイ大学を経て、1936年にマサチューセッツ工科大学で物理学博士号を取得しました。

コダック時代と研究

卒業後、彼はニューヨーク州ロチェスターにあるイーストマン・コダック社の研究所に入社し、1975年に引退するまで勤務しました。コダック在籍中は、カラー写真技術の基礎理論確立に大きく貢献しました。特に、記録層における不要な露光の補正のためのカラーマスキング技術の開発は彼の代表的な業績の一つです。1975年のコダック退職後も、ロチェスター大学の工学研究所客員教授として1995年まで活躍しました。

マクアダムの楕円と色知覚

マクアダムの最も有名な業績は、色の知覚に関する研究です。彼は、色の見え方の個人差を統計的に分析し、CIE色度図上に「マクアダムの楕円」と呼ばれる図を提示しました。この楕円は、人が同じ色と感じる色の範囲を示しており、色差の知覚の基礎となる研究として広く認知されています。この研究を通じて、心理物理学的な色空間が非ユークリッド性を持つことを明らかにしました。彼の研究は、色の制御技術分野に大きな影響を与えました。ただし、後に開発された他の色差式と比較すると、知覚される色差の特定においては必ずしも最適な結果を得られないということも判明しています。

カラリメトリとコンピューター

1940年代半ばには、マクアダムはカラリメトリの計算にいち早くコンピューターを活用しました。また、分光測色器の改良や三刺激値積分器の発明など、カラリメトリの計測技術の向上にも貢献しました。

昼光分析

ジャッドやワイスゼッキらとの共同研究では、昼光スペクトルの主成分分析を行い、昼光の様々な色温度を、限られた数のスペクトル成分の線形結合で表現できることを示しました。この研究は、昼光の色を正確に再現する技術の開発に繋がりました。

OSA均等色尺度

1947年からは、アメリカ光学会（OSA）の委員会において指導的な役割を担い、視覚的に均一な色空間モデルの開発プロジェクトを主導しました。ジャッドの後任として委員長を務め、1974年には「均等色尺度（UCS）」を発表。この研究成果は、色の表現と管理において重要な役割を果たしています。1977年にはOSAが558色からなる相対色全集を発行し、色の標準化に貢献しました。

まとめ

デビッド・ルイス・マクアダムは、長年にわたる研究活動を通して、カラー写真技術、カラリメトリ、色知覚の理解、そして均等色尺度の開発に多大な貢献を果たしました。彼の研究成果は、現代の色彩科学技術の基礎を築き、私たちを取り巻く色の世界を豊かにすることに貢献しています。彼の業績は、これからも色彩科学の発展に大きな影響を与え続けるでしょう。

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