デビル (1997年の映画)

デビル：家族の温もりと裏切りの影

1997年公開のアメリカ映画『デビル』（原題：The Devil's Own）は、ハリソン・フォードとブラッド・ピットという豪華キャストを迎え、緊迫感あふれるサスペンスアクションを展開する作品です。同じタイトルの別の映画と混同しないよう注意が必要です。

物語の中心は、アイルランド共和軍（IRA）の活動家であるフランキー（ブラッド・ピット）です。彼は幼い頃に父親を殺害された過去を持ち、復讐の念を胸に、アメリカで対空ミサイルを入手しようと企てます。彼の計画は、アイルランド系アメリカ人の警官トム・オミーラ（ハリソン・フォード）との出会いによって、思わぬ方向へと進んでいきます。

フランキーは、偽名を使ってニューヨークに潜入し、IRA関係者の協力を得ながら、オミーラ一家に下宿することになります。オミーラ一家は、フランキーの正体を知らず、彼を温かく迎え入れます。フランキーは、久しぶりの家族の温もりと安らぎを感じ、心を開き始めます。しかし、彼の目的はミサイルの入手であり、裏切りと危険が潜む世界に足を踏み入れているのです。

ミサイル売買の取引相手である武器商人バークとの接触を通じて、フランキーは計画を着々と進めます。しかし、予期せぬ事態が発生し、取引は延期されます。この延期によってバークは激昂し、フランキーが隠し持っている大金を奪おうと、部下をオミーラ家へ送り込みます。

オミーラとフランキーは侵入者を撃退しますが、この事件によってトムはフランキーの正体に気づきます。温かい家族の温もりと、冷酷な裏切りの影が交錯する中、トムは葛藤を抱えつつ、事態の収拾に奔走します。

この映画の見どころは、ハリソン・フォードとブラッド・ピットの演技による、緊張感あふれる人間ドラマです。一見、正反対の性格を持つ2人の男が、複雑な状況の中でどのように関わり合い、葛藤し、そして最終的にどのような決断を下すのか。その過程は、観客を最後まで見逃せない展開に引き込みます。

監督は、この作品が遺作となったアラン・J・パクラ。撮影はゴードン・ウィリスが担当しており、彼にとっても最後の作品となりました。脚本はケヴィン・ジャール、ロバート・マーク・ケイメン、デヴィッド・アーロン・コーエン、ヴィンセント・パトリックと、複数の人物が共同で執筆しており、緻密に練られたストーリーが特徴です。

『デビル』は、アイルランド共和軍や北アイルランド問題といった、歴史的背景と複雑な人間関係を巧みに織り交ぜたサスペンスアクション映画です。家族の温もりと裏切りの葛藤、正義と復讐の狭間で揺れる登場人物たちの姿を通して、人間の複雑な感情と、歴史の重みに触れることができる、見応えのある作品と言えるでしょう。映画音楽はジェームズ・ホーナーが担当し、ドロレス・オリオーダンが歌う『God Be With You』も印象的な楽曲として作品に彩りを添えています。

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