デリーに行こう!

2011年にインドで劇場公開された映画『デリーに行こう!』（原題は英語で Chalo Dilli）は、シャシャーント・シャー監督によるインドのロードムービー作品です。主演にはミス・ユニバースの経歴を持つ女優ララ・ダッタと、個性派俳優ヴィナイ・パタークが起用され、偶然の出会いから始まる二人の珍道中がユーモラスに描かれます。

製作背景

本作は、主演の一人であるララ・ダッタの夫であり、元プロテニス世界ランキング1位のダブルスプレイヤーでもあるマヘシュ・ブパシが経営する映画製作会社、ビッグ・ダディ・プロダクションが共同製作に名を連ねています。撮影は、インドの商業・金融の中心地であるムンバイ、古都であり首都であるデリー、そして「ピンクシティ」として世界的に有名な観光都市ジャイプルなど、インドの広範囲にわたる場所で行われ、多様な風景が作品に収められています。

物語とテーマ

物語は、仕事でムンバイからデリーへ向かおうとする堅物なキャリアウーマン、ミヒカ・バナジー（ララ・ダッタ）と、ひょんなことから彼女の旅に同行することになる、どこか憎めないお節介焼きの男性、マヌ・グプタ（ヴィナイ・パターク）の出会いから始まります。飛行機の遅延や様々なアクシデントにより、二人はやむなく陸路での旅を続けることになります。電車、バス、ジープなど、様々な交通手段を使いながら、インドの地方都市や田舎道を旅する中で、対照的な性格の二人は衝突を繰り返しながらも、徐々に互いの本質に触れていきます。

この旅の過程で起こる数々の予期せぬ出来事や、道中で出会う個性豊かな人々との交流を通じて、二人の関係性が変化していく様子が丁寧に描かれています。本作は、1987年に公開されたアメリカのコメディ映画『大災難P.T.A.』(原題: Planes, Trains and Automobiles)にインスピレーションを受けていることが指摘されており、主人公二人の関係性や、次々と巻き起こるハプニングといった点で共通点が見られます。単なるコメディに終わらず、旅を通じて自己を見つめ直し、新たな価値観を発見していくという人間ドラマの側面も持ち合わせています。

主要キャスト

主人公のミヒカ・バナジーを演じたララ・ダッタは、この作品でプロデューサーとしても参加しています。相棒となるマヌ・グプタ役のヴィナイ・パタークは、その巧みな演技で主人公の魅力を引き出しています。また、インド映画界の大スターであるアクシャイ・クマールがヴィクラム・ラトレ中佐役で特別出演し、短いながらも印象的な存在感を示しています。その他のキャストとしては、マヒカ・シャルマがアリシャ役、パンカージ・ジャーがスレンドラ・ミスラ警部役、ブレジェンドラ・カラがK・C・パント役、ラーフル・シンがバイロン・シン・グルジャール役、ガウラヴ・ゲラがゴピ役、ヤナ・グプタがライラ役、テディ・モーリャがバイヤジ／シュリヴァスタヴァ・ジー役をそれぞれ演じ、物語に深みを与えています。

批評家の評価

本作に対する批評家のレビューは大きく分かれました。例えば、主要な新聞であるザ・タイムズ・オブ・インディアは5段階評価で3.5星をつけ、一定の評価を得ました。しかし、インディア・ウィークリー紙は2.5星、そしてオンラインメディアのRediff.comに至っては1.5星と、比較的低い評価を与えるレビューも存在し、作品の受け止め方は評論家によって異なったことが示されています。コメディ要素や主演二人の演技、ロードムービーとしての描写などが評価のポイントとなった一方で、物語の展開や演出に対して厳しい意見もあったと考えられます。

続編の企画

本作は、公開後、批評面では評価が分かれたものの、一定の観客動員を得たことから、続編の企画が持ち上がりました。2014年には、『Chalo China』という仮題で続編の製作が発表されましたが、その後、資金調達の困難などが影響し、残念ながら現時点では製作が延期されたままとなっています。

まとめ

『デリーに行こう!』は、インドという広大な舞台を背景に、性格の異なる男女が繰り広げるドタバタ劇を通じて、人との繋がりや人生の意外性を描いた作品です。ユーモアの中に温かさがあり、ロードムービーならではの解放感と予期せぬ出会いが魅力的な一作と言えるでしょう。

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