デンドロビウム・ファーメリ

デンドロビウム・ファーメリ (Dendrobium farmeri)

デンドロビウム・ファーメリは、ラン科セッコク属に属する植物であり、カリスタ系デンドロビウムの代表的な種です。特に春から初夏にかけて咲く花は、ピンクと黄色の色合いで、房状に集まって咲く様子が特徴とされています。

特徴

デンドロビウム・ファーメリは常緑性の多年生草本で、着生植物として知られています。株は偽球茎を持ち、この部分は高さ20～30cmほどになりますが、その基部は細く、先端近くの三節のみが膨らんでいます。同時に、偽球茎は非常に固く、緑色で光沢があります。断面は菱形で、観察することでその特異な形状を確認できます。

葉は茎の先端近くから3～4枚が出ており、薄いながらも硬く革質です。葉の形は幅が広く、卵形から披針形で、長さは8～18cm、幅は3.5～6cmと変化します。

開花期には、花茎が葉の付け根から20～25cmの長さで伸び、時には10個以上の花が密集して咲きます。花は比較的集まって咲き、花の直径は約5cm程度です。花の萼片や側花弁は淡い藤色で染まっており、場合によっては全体が白になることもあります。唇弁は中心から黄色く、縁は白で形成されています。その美しい形状と鮮やかな色彩は、観賞族の間で人気を博しています。

分布と生育環境

デンドロビウム・ファーメリは、シッキムやダージリン、ネパール、ブータン、アッサム、ビルマ、そしてタイにかけて広く分布しています。特にKhasia Hillsの地域では、標高300mから1000mの間でよく見られます。これらの地域では、特に湿度の高い環境や、適度に冷涼な気候が育成に適しています。

分類と類似種

この種はカリスタ節に分類されており、他のデンドロビウム種と同様に、独特の生態や花の特性を持っています。

利用

デンドロビウム・ファーメリは洋ランの一種として、庭や室内で観賞用に栽培されています。デンドロビウムの中でもカリスタ系に属し、その中で開花期間は短いものの、約1ヶ月間も花を楽しむことができるため、育てる価値があります。しかし、開花させるためには注意が必要です。特に、秋にしっかりと低温環境に晒し、屋内に取り込んだ後に一定期間の水遣りを停止し、乾燥させる時期が必要です。

しかし、その美しさと鑑賞価値の高さから、原産地域では採取が進んでおり、絶滅が懸念されています。したがって、この植物の保護活動や、育成環境の改善が望まれる現在、デンドロビウム・ファーメリは貴重な存在であると言えます。

参考文献

• - 唐澤耕司監修、『蘭　山渓カラー図鑑』、(1996)、山と渓谷社
• - 土橋豊、『洋ラン図鑑』、(1993)、光村推古書院
• - 『園芸植物大辞典 2』、(1994)、小学館
• - Madhumita Majumder et al. (2010) Diredt and Callus-mediated Protocorm-like Body Induction and High Frequency Adventitious Shoot Regeneration in an Endangered Orchid - Dendrobium farmeri Pax. (Orchidaceae). Floriculture and Ornamental Biotechnology 4(Special Issue 1): p.22-28.

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