藤猛

藤猛（ふじ たけし）

藤猛（本名：ポール・タケシ・藤井）は、1940年7月6日にアメリカ合衆国ハワイ州ホノルルで生まれた日系3世のボクサーであり、元WBA・WBC世界スーパー[[ライト級]]王者として名を馳せた。彼は日系人として、アメリカでの生活と日本文化に根ざしたアイデンティティを持ち、ボクシングの世界で独自の存在感を放った。

人物と経歴

藤は幼少期をハワイで過ごし、幼稚園時代からエディ・タウンゼントのジムでトレーニングを重ねた。高校を卒業後はアメリカ軍に入隊し、海兵隊として日本や他の地での活動を行いながらもアマチュアボクシングに打ち込んでいた。彼のアマチュア戦績は132戦116勝16敗と優れたものだった。特筆すべきは、ネバダ州大会やカリフォルニア州のゴールデン・グローブ大会において優勝したことが挙げられる。

プロボクサーへの道は、彼に師事した力道山のジム「リキボクシングジム」を通じて開かれた。力道山自身がボクシング界へ進出する計画があったが、彼の刺殺という悲劇的な事件に伴い、藤はその後継者としてジムに残ることになった。藤は1965年に日本王者、1966年に東洋王者、そして1967年には世界王者のタイトルを獲得した。

ボクシングスタイルと人気

藤は独特のファイトスタイルで知られ、特に「ハンマー・パンチ」と呼ばれる強打で圧倒的なKO率（7割以上）を誇った。特に注目すべきは、斬新な「デンプシー・ロール」を駆使した攻撃スタイルである。彼は日本語が堪能ではなかったが、吉村義雄の指導により「オカヤマのおバアちゃん、見てる？」という言葉で日本人の心を掴もうとした。この言葉は視聴者に親近感を与え、「大和魂」というフレーズは当時の流行語ともなったが、彼の言い間違いも反響を呼び、ファンに愛された。

復帰と引退

1968年、ボクシングコミッションに引退届を提出するも不受理となり、防衛期限の過ぎた同年11月には王座を剥奪された。翌年には引退後も復帰を果たし、一度は試合で勝利を収めたが、1970年には突然試合出場を拒否。その結果、無期限の試合出場停止の処分を受け、以後はボクシング界から姿を消すこととなる。

その後、藤はキックボクシングに転身し成功を収めるものの、再度リングを離れた。彼の戦跡は1978年に公開された映画『四角いジャングル　格闘技世界一』にも記録されている。

引退後の人生

藤はハワイに帰郷後、安部譲二のルポにおいて引退後の悲惨な境遇にいる元ボクサーの中、彼が例外的な成功例として取り上げられる。子どもを立派に育て上げ、一流大学を卒業させ、素晴らしい企業に入社させるなど、悠々自適な生活を送った。1996年に日本へ再度移住し、ボクシングクラブの会長を務めた後、2002年には水戸市にボクシングスクールを開くこととなった。このスクールは、特に子どもたちを対象にした指導を行った。

藤は東京で特別トレーナーとしての役割もになっており、ボクシング界での影響力を持ち続けている。彼の人生は、ボクシングを通じて多くのファンに愛され続け、今後もその功績は語り継がれていくだろう。

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