デヴィッド・ローウェル・リッチ

デヴィッド・ローウェル・リッチ

デヴィッド・ローウェル・リッチ（David Lowell Rich）は、1920年ないしは1923年の8月31日に生まれ、2001年10月21日にこの世を去ったアメリカ合衆国の映像作家です。主に映画監督、そして映画プロデューサーとして活動しました。

経歴

ニューヨークに生まれたリッチは、1950年代初頭から本格的に監督としてのキャリアをスタートさせました。最初の十数年間、具体的には1950年から1967年までの間に、彼は劇場公開用の映画作品に加え、数多くのテレビドラマシリーズのエピソード演出を手がけ、その数は100本近くに及びます。この時期には、『ルート66』や『事件と裁判』といった人気テレビシリーズの主要なエピソードを多数演出しました。彼の演出スタイルは、ドラマティックな展開と登場人物の内面に迫る描写に定評があり、テレビという媒体の表現力を広げる一助となりました。

1960年代後半からは、劇場用映画もいくつか監督しましたが、彼のキャリアの大きな特徴は、その後も1980年代にかけて、テレビ映画の監督として精力的に活動を続けた点にあります。サスペンス、ドラマ、スリラー、歴史ものなど、幅広いジャンルのテレビ映画を手がけ、その質の高さと多作さで知られました。テレビ映画という、しばしば劇場用映画よりも予算や製作期間が限られるメディアにおいて、彼は巧みな手腕を発揮し、数多くの印象的な作品を生み出しました。

彼の仕事は高く評価され、特に1978年に監督したテレビ映画『サイマス・キュデルカの亡命（The Defection of Simas Kudirka）』では、優れたテレビ演出家に贈られるプライムタイム・エミー賞の演出監督賞スペシャルドラマ部門を受賞するという栄誉に輝きました。これは、彼がテレビ映画という分野で築き上げた功績を象徴する出来事と言えるでしょう。

リッチ家は映像業界と縁が深く、彼の弟であるジョン・リッチもまた映画監督として知られています。

主な監督作品

デヴィッド・ローウェル・リッチが監督した作品の一部を以下に挙げます。彼の多岐にわたる活動の一端がうかがえます。

劇場公開映画

• - 『Have Rocket, W(ill Travel』（1959年）
• - 『小さな逃亡者』（See How They Run）（1964年）
• - 『母の旅路』（Madame X）（1965年）
• - 『シャイアン砦』（The Plainsman）（1966年）
• - 『ボディガード』（A Lovely Way to Die）（1968年）
• - 『猫』（Eye of the Cat）（1969年）
• - 『エアポート'80』（The Concorde ... Airport '79）（1979年）
• - 『Chu Chu and the Philly Flash』（1981年）
• - 『ブルファイター/栄光のラスト・チャンス』（The Fighter）（1982年）

テレビシリーズ（エピソード監督）

• - 『ルート66』（Route 66）（1960年 - 1964年）
• - 『事件と裁判』（Arrest and Trial）（1963年 - 1964年）

テレビ映画

• - 『炎の翼』（Wings of Fire）（1967年）※製作兼任
• - 『密林の宝庫』（The Mask of Sheba）（1970年）
• - 『ホラーフライト・悪魔の旅客機』（The Horror at 37,000 Feet）（1972年）
• - 『刑事ブロック』（Brock's Last Case）（1972年）
• - 『黒薔薇の女』（The Judge and Jake Wyler）（1972年）
• - 『犯罪クラブ』（Crime Club）（1973年）
• - 『女子大生悪魔の体験入学』（Satan's School for Girls）（1973年）
• - 『暴走列車/大惨事への豪雪山脈急勾配』（Runaway!）（1973年）
• - 『戦闘機対戦車』（Death Race）（1973年）
• - 『セックス・シンボル』（The Sex Symbol）（1974年）
• - 『アロハはさよならの意味』（Aloha Means Goodbye）（1974年）※製作兼任
• - 『超豪華客船乗っ取り大爆破! クインメリー・アドベンチャー』（Adventures of the Queen）（1975年）
• - 『パニック・イン・SST/デス・フライト』（SST: Death Flight）（1977年）
• - 『若草物語』（Little Women）（1978年）
• - 『サイマス・キュデルカの亡命』（The Defection of Simas Kudirka）（1978年）
• - 『絆/死を見つめて』（A Family Upside Down）（1979年）
• - 『原爆投下機/B-29エノラ・ゲイ～一九四五・八・六・ヒロシマ～』（Enola Gay: The Men, the Mission, the Atomic Bomb）（1980年）
• - 『サーズデイ・チャイルド』（Thursday's Child）（1983年）
• - 『華麗なる旅路・新聞王ハーストの恋』（The Hearst and Davies Affair）（1985年）
• - 『新・手錠のままの脱獄』（The Defiant Ones）（1986年）

デヴィッド・ローウェル・リッチは、テレビがエンターテイメントの主要な媒体へと成長していく時代において、その最前線で活躍した重要な映像作家の一人です。彼の監督作品は、映画、テレビシリーズ、そしてテレビ映画と多岐にわたり、特にテレビ映画の分野でその才能を遺憾なく発揮し、エミー賞受賞という形でその功績が認められました。彼の残した作品群は、アメリカのテレビ史、そして映画史の一断面を示す貴重な遺産と言えるでしょう。

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