デヴィン・ヘイニー
デヴィン・ヘイニー
1998年11月17日生まれ、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコ出身のプロボクサー。正確無比な技術と優れた身体能力を兼ね備え、"The Dream"（ザ・ドリーム）のニックネームで知られる。主要4団体統一ライト級王者、そしてWBC世界スーパーライト級王座を獲得した世界2階級制覇王者である。トレーナー兼マネージャーは実父のビル・ヘイニー氏が務める。
幼少期から父の指導のもとボクシングに打ち込み、アマチュア時代には輝かしい実績を残した。特に国内レベルでは、2014年と2015年の全米ジュニア・ユース選手権でライアン・ガルシアを破り連続優勝を果たすなど、将来を嘱望される存在だった。しかし、アメリカのプロ規定により16歳では国内でプロライセンスを取得できなかったため、プロデビューからの4戦はメキシコで戦いの場を求めた。
2016年4月、マニー・パッキャオ対ティモシー・ブラッドリー第3戦というビッグイベントの前座で、ついにアメリカ本土でのプロデビューを飾った。その後も着実にキャリアを積み重ね、全米や北米レベルの地域タイトルを獲得し、世界の舞台へと駒を進めていく。
2019年に入ると、WBCインターナショナル、WBOインターコンチネンタル、WBAインターナショナルの各ライト級タイトルを立て続けに獲得。同年9月にはWBC世界ライト級暫定王座決定戦を制し、暫定王座を獲得した。そして、当時の正規王者ワシル・ロマチェンコがフランチャイズ王座に認定されたことに伴い、僅か20歳にしてWBC世界ライト級正規王者に昇格。この昇格経緯を巡っては、プロモーターのエディー・ハーン氏が、ロマチェンコとの対戦を強く望んでいたヘイニーにとって不本意な形であると批判するなど、一部で論争も巻き起こった。
正規王者となったヘイニーは、サンティアゴ、ガンボア、リナレス、ディアスといった実力者たちを相手に順調に防衛を重ねる。特に2021年12月のジョセフ・ディアス戦では、団体内王座統一を果たし、WBCの王座を確固たるものとした。
そして2022年6月、運命的な一戦を迎える。オーストラリアのメルボルンに乗り込み、WBAスーパー、IBF、WBOの各世界ライト級王座、そしてWBCフランチャイズ王座を保持していた統一王者ジョージ・カンボソス・ジュニアと対戦。圧倒的なパフォーマンスを見せつけ判定勝ちを収め、ボクシング史上8人目となる男子主要4団体統一ライト級王者という偉業を達成した。同年10月のカンボソスとのダイレクトリマッチでも再び判定勝ちを収め、統一王座の初防衛に成功している。
統一王者となったヘイニーは、次なる相手として元3階級制覇王者のワシル・ロマチェンコと対戦。2023年5月に行われたこの試合は、ヘイニーが判定で勝利し王座を防衛したが、多くの関係者やファンからはロマチェンコの勝利を支持する声も多く、物議を醸す判定となった。この試合の計量時には、ヘイニーがロマチェンコを突き飛ばすという行為に及び、罰金を科されている。
また、この時期にはリング外でも予期せぬ出来事が起こった。同年7月、交通検問を受けた際に車内から銃が見つかり、武器を隠し持っていた容疑で逮捕・起訴されるという経験をした（運転は別の人物だったが、車の登録者であったため）。
統一ライト級王者として君臨していたヘイニーだったが、ライト級のリミットでの戦いが厳しくなったことや、WBCの指名挑戦者であるシャクール・スティーブンソンの存在もあり、階級アップの可能性を模索し始める。WBCにスーパーライト級王座への挑戦を打診する中で、ライト級王座は休養王座に認定された。最終的には、2023年11月にライト級の全タイトルを返上し、スーパーライト級への転向を正式に表明した。
スーパーライト級転向初戦として、2023年12月にはWBC世界スーパーライト級王者レジス・プログレイスに挑戦した。この試合でヘイニーは圧倒的なスキルを見せつけ、プログレイスからダウンを奪うなど終始優位に進め、大差の判定勝ち。見事に2階級制覇を達成し、改めてその実力の高さを示した。この試合の計量から試合当日までの間に11kg以上体重を増やしていたことも話題となった。
新たな階級で順調なスタートを切ったヘイニーの次なる相手は、アマチュア時代からのライバルであるライアン・ガルシアとの対戦が濃厚となった。一度は交渉が頓挫しかけるも、最終的に2024年4月に対戦が決定。試合に向けたプロモーションの段階から両者の間には激しい舌戦が繰り広げられ、フェイスオフでヘイニーがガルシアを突き飛ばす騒動も発生した。
しかし、試合は予期せぬ展開を迎える。前日計量でガルシアが規定体重を大幅にオーバーし、王座獲得の権利を失ったのである。さらに、計量セレモニーでのガルシアの挑発的な行動やSNSでの言動も相まって、異常な雰囲気の中で試合が行われることとなった。迎えた試合本番、圧倒的有利と見られていたヘイニーだったが、ガルシアの強打の前に3度のダウンを喫し、まさかの判定負け。プロキャリア32戦目にして初の黒星を喫した。試合後には、ガルシアから禁止薬物であるオスタリンの陽性反応が検出されたことが報じられ、この試合はドーピング問題と絡み、大きな波紋を呼んだ。ヘイニー側は試合結果の変更を求めるなど対応に追われた結果、最終的にニューヨーク州アスレチック・コミッションはガルシアに処分を科し、試合結果を「ノーコンテスト」（無効試合）に変更した。
ガルシア戦による肉体的、精神的なダメージを考慮した本人の意向により、2024年6月には保持していたWBC世界スーパーライト級王座を剥奪され、休養王座に認定された。現在は休養王者として、今後のキャリアの再構築を目指している。
私生活では2019年にイスラム教に改宗したムスリムでもある。また、ボクシング界の現状について、フロイド・メイウェザー・ジュニアを例に挙げ、無敗記録への拘りが強すぎるあまり強豪同士の対戦が避けられる傾向にあることを批判し、総合格闘技UFCの対戦姿勢を評価する発言も行っている。
プロ戦績は33戦32勝（15KO）1無効試合（ノーコンテスト）。ライト級での4団体統一、そしてスーパーライト級での王座獲得と輝かしいキャリアを持つ一方、ロマチェンコ戦の判定論争やガルシア戦での初黒星とドーピング騒動など、ボクサーとしての栄光と波乱を経験してきた「ザ・ドリーム」の今後の動向が注目される。
1998年11月17日生まれ、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコ出身のプロボクサー。正確無比な技術と優れた身体能力を兼ね備え、"The Dream"（ザ・ドリーム）のニックネームで知られる。主要4団体統一ライト級王者、そしてWBC世界スーパーライト級王座を獲得した世界2階級制覇王者である。トレーナー兼マネージャーは実父のビル・ヘイニー氏が務める。
アマチュアでの飛躍とプロへの転向
幼少期から父の指導のもとボクシングに打ち込み、アマチュア時代には輝かしい実績を残した。特に国内レベルでは、2014年と2015年の全米ジュニア・ユース選手権でライアン・ガルシアを破り連続優勝を果たすなど、将来を嘱望される存在だった。しかし、アメリカのプロ規定により16歳では国内でプロライセンスを取得できなかったため、プロデビューからの4戦はメキシコで戦いの場を求めた。
2016年4月、マニー・パッキャオ対ティモシー・ブラッドリー第3戦というビッグイベントの前座で、ついにアメリカ本土でのプロデビューを飾った。その後も着実にキャリアを積み重ね、全米や北米レベルの地域タイトルを獲得し、世界の舞台へと駒を進めていく。
ライト級での栄光と4団体統一
2019年に入ると、WBCインターナショナル、WBOインターコンチネンタル、WBAインターナショナルの各ライト級タイトルを立て続けに獲得。同年9月にはWBC世界ライト級暫定王座決定戦を制し、暫定王座を獲得した。そして、当時の正規王者ワシル・ロマチェンコがフランチャイズ王座に認定されたことに伴い、僅か20歳にしてWBC世界ライト級正規王者に昇格。この昇格経緯を巡っては、プロモーターのエディー・ハーン氏が、ロマチェンコとの対戦を強く望んでいたヘイニーにとって不本意な形であると批判するなど、一部で論争も巻き起こった。
正規王者となったヘイニーは、サンティアゴ、ガンボア、リナレス、ディアスといった実力者たちを相手に順調に防衛を重ねる。特に2021年12月のジョセフ・ディアス戦では、団体内王座統一を果たし、WBCの王座を確固たるものとした。
そして2022年6月、運命的な一戦を迎える。オーストラリアのメルボルンに乗り込み、WBAスーパー、IBF、WBOの各世界ライト級王座、そしてWBCフランチャイズ王座を保持していた統一王者ジョージ・カンボソス・ジュニアと対戦。圧倒的なパフォーマンスを見せつけ判定勝ちを収め、ボクシング史上8人目となる男子主要4団体統一ライト級王者という偉業を達成した。同年10月のカンボソスとのダイレクトリマッチでも再び判定勝ちを収め、統一王座の初防衛に成功している。
統一王者としての試練と階級変更
統一王者となったヘイニーは、次なる相手として元3階級制覇王者のワシル・ロマチェンコと対戦。2023年5月に行われたこの試合は、ヘイニーが判定で勝利し王座を防衛したが、多くの関係者やファンからはロマチェンコの勝利を支持する声も多く、物議を醸す判定となった。この試合の計量時には、ヘイニーがロマチェンコを突き飛ばすという行為に及び、罰金を科されている。
また、この時期にはリング外でも予期せぬ出来事が起こった。同年7月、交通検問を受けた際に車内から銃が見つかり、武器を隠し持っていた容疑で逮捕・起訴されるという経験をした（運転は別の人物だったが、車の登録者であったため）。
統一ライト級王者として君臨していたヘイニーだったが、ライト級のリミットでの戦いが厳しくなったことや、WBCの指名挑戦者であるシャクール・スティーブンソンの存在もあり、階級アップの可能性を模索し始める。WBCにスーパーライト級王座への挑戦を打診する中で、ライト級王座は休養王座に認定された。最終的には、2023年11月にライト級の全タイトルを返上し、スーパーライト級への転向を正式に表明した。
スーパーライト級制覇とキャリア初の敗北
スーパーライト級転向初戦として、2023年12月にはWBC世界スーパーライト級王者レジス・プログレイスに挑戦した。この試合でヘイニーは圧倒的なスキルを見せつけ、プログレイスからダウンを奪うなど終始優位に進め、大差の判定勝ち。見事に2階級制覇を達成し、改めてその実力の高さを示した。この試合の計量から試合当日までの間に11kg以上体重を増やしていたことも話題となった。
新たな階級で順調なスタートを切ったヘイニーの次なる相手は、アマチュア時代からのライバルであるライアン・ガルシアとの対戦が濃厚となった。一度は交渉が頓挫しかけるも、最終的に2024年4月に対戦が決定。試合に向けたプロモーションの段階から両者の間には激しい舌戦が繰り広げられ、フェイスオフでヘイニーがガルシアを突き飛ばす騒動も発生した。
しかし、試合は予期せぬ展開を迎える。前日計量でガルシアが規定体重を大幅にオーバーし、王座獲得の権利を失ったのである。さらに、計量セレモニーでのガルシアの挑発的な行動やSNSでの言動も相まって、異常な雰囲気の中で試合が行われることとなった。迎えた試合本番、圧倒的有利と見られていたヘイニーだったが、ガルシアの強打の前に3度のダウンを喫し、まさかの判定負け。プロキャリア32戦目にして初の黒星を喫した。試合後には、ガルシアから禁止薬物であるオスタリンの陽性反応が検出されたことが報じられ、この試合はドーピング問題と絡み、大きな波紋を呼んだ。ヘイニー側は試合結果の変更を求めるなど対応に追われた結果、最終的にニューヨーク州アスレチック・コミッションはガルシアに処分を科し、試合結果を「ノーコンテスト」（無効試合）に変更した。
現在の状況
ガルシア戦による肉体的、精神的なダメージを考慮した本人の意向により、2024年6月には保持していたWBC世界スーパーライト級王座を剥奪され、休養王座に認定された。現在は休養王者として、今後のキャリアの再構築を目指している。
私生活では2019年にイスラム教に改宗したムスリムでもある。また、ボクシング界の現状について、フロイド・メイウェザー・ジュニアを例に挙げ、無敗記録への拘りが強すぎるあまり強豪同士の対戦が避けられる傾向にあることを批判し、総合格闘技UFCの対戦姿勢を評価する発言も行っている。
プロ戦績は33戦32勝（15KO）1無効試合（ノーコンテスト）。ライト級での4団体統一、そしてスーパーライト級での王座獲得と輝かしいキャリアを持つ一方、ロマチェンコ戦の判定論争やガルシア戦での初黒星とドーピング騒動など、ボクサーとしての栄光と波乱を経験してきた「ザ・ドリーム」の今後の動向が注目される。
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