データ構造図

データ構造図（Data Structure Diagram：DSD）とは

データ構造図（DSD）は、データの構成要素とそれらの関係を視覚的に表現するデータモデルの一種です。概念スキーマを記述するために用いられ、構成要素間の制約を明確にするグラフィカルな表記法を提供します。

DSDの基本要素

DSDの基本的なグラフィック要素は、以下の2つです。

箱: 実体（エンティティ）を表します。これは、データが表現する具体的な対象物や概念を指します。
矢印: 実体間の関係を表します。データ間の繋がりや相互作用を示します。

DSDは、特に複雑なデータ構造を持つ実体を文書化する際に非常に有効です。データ辞書内のデータ要素の構造を視覚的に把握しやすくします。これにより、データの構造や関連性を直感的に理解することができます。

ERモデルとの違い

DSDは、実体関連モデル（ERモデル）を拡張したものです。ERモデルとの主な違いは、以下の点にあります。

属性の記述: ERモデルでは、属性は実体の外に記述されますが、DSDでは実体の箱の中に記述されます。
関係の表現: ERモデルは、異なる実体間の関係を表現することに重点を置いていますが、DSDは実体内の要素群の関係に重点を置いています。そのため、実体間の関係を把握しやすく、より詳細なデータ構造を表現できます。
制約の明示: DSDでは、実体と実体を束縛する制約を明示的に指定できます。これにより、データ間の関係性をより厳密に定義できます。

ERモデルはシンプルで直感的ですが、関係間の制約を表現するのが難しく、複数の属性を持つ実体を表現しようとすると複雑になりがちです。一方、DSDは実体内の要素間の関係に重点を置いているため、複雑なデータ構造をより明確に表現できます。

DSDの表記法

DSDの表記法にはいくつかのスタイルが存在し、特に多重度（1対1、多対1、1対多などの関係の種類）の定義方法に違いがあります。多重度は、矢印の形状を変化させたり、数値を用いて表記したりすることで表現します。

バックマン線図（Bachman Diagram）

バックマン線図は、DSDの一種であり、ネットワークモデルや関係モデルの論理データ設計に用いられます。これは、データモデルがシステムにおけるデータ格納方法とは独立していることを意味します。

バックマン線図は、データベース研究の先駆者であるチャールズ・バックマンによって考案されました。主にソフトウェア設計で使用され、データ構造を明確化し、設計プロセスを支援します。

関係モデルでは、関係は属性間の結びつきであり、関係におけるすべてのキーに推移的従属性があるわけではありません。関係間の結合は、属性の一致に基づいて行われます。バックマン線図では、それぞれの関係を四角形で表し、関係間の結合を矢印で結びます。矢印には多重度を表示する必要があり、1対N、1対1、N対Nなどの関係を示すことができます。ただし、N対Nの関係は避けるべきとされており、2つの1対Nの関係に置き換えるべきです。

まとめ

データ構造図（DSD）は、データ構造を明確に表現するための強力なツールです。特に、複雑なデータ構造を扱う際に、データ要素間の関係性を視覚的に理解するのに役立ちます。バックマン線図は、DSDの一種であり、データモデルの設計において重要な役割を果たします。

参考文献

Charles W. Bachman. Data structure diagrams. Data Base, 1969, 1(2):4–10.
Tom DeMarco. Structured Analysis and System Specification. ISBN 0-13-854380-1. Prentice Hall. May 11, 1979.
Edward Yourdon. Modern Structured Analysis. ISBN 0-13-598624-9. Prentice Hall. August 1, 1988; now available as the Structured Analysis Wiki.

関連項目

データフロー図
実体関連モデル
* 統一モデリング言語

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