関係モデル

関係モデルとは

関係モデル（リレーショナルモデル）は、エドガー・F・コッドが提唱したデータベースモデルで、現代のデータベースの基礎となっています。このモデルは、データを「関係（リレーション）」という形で表現し、集合論と述語論理に基づいて構築されています。

関係モデルの基本

関係モデルの基本的な考え方は、すべてのデータはn項の関係で表現されるということです。数学における関係は二項関係を指しますが、関係モデルではこれをn項に拡張しています。このn項の関係は、n個の定義域（ドメイン）の直積集合の部分集合として定義されます。

データの表現

関係モデルでは、データはテーブル形式で表現されます。テーブルは「関係」と呼ばれ、各列は「属性」、各行は「組（タプル）」に対応します。属性は名前とデータ型を持ち、組は属性値の集合です。関係は、「見出し（ヘッディング）」と「本体（ボディ）」から構成され、見出しは属性の集合、本体は組の集合です。

関係代数と関係論理

データの操作は、関係代数または関係論理を用いて行います。これらは同等の演算能力を持ち、データの検索、挿入、更新、削除などを表現できます。

正規化

関係モデルでは、関係の正規化という過程があります。これは、データの冗長性を排除し、矛盾を防ぐための設計手法です。正規化によって、より整合性があり、効率的なデータベースを構築できます。

関係モデルの要素

定義域（ドメイン）

定義域とは、属性が取りうる値の範囲を定義するものです。これはデータ型とほぼ同じ意味で、整数型、文字列型、論理型などがあります。例えば、年齢を表す属性の定義域は、整数の範囲として設定されます。

属性

属性は、テーブルの列に対応し、属性名と定義域名のペアで構成されます。例えば、「名前」という属性は文字列型の定義域を持ち、「年齢」という属性は整数型の定義域を持ちます。

組（タプル）

組は、テーブルの行に対応し、属性値の集合です。組は属性の値を持ち、それらの値は属性の定義域に適合します。例えば、顧客テーブルでは、各行が顧客の情報を表す組となります。

関係（リレーション）

関係は、見出しと本体から構成され、見出しは属性の集合、本体は組の集合です。関係はテーブル全体を指し、データを構造化して保持します。

関係モデルとSQL

SQL（Structured Query Language）は、関係データベースを操作するための標準言語です。しかし、SQLは関係モデルからいくつかの点で逸脱しています。例えば、SQLではテーブルの行の重複が許容されますが、関係モデルでは許容されません。

SQLの逸脱

• - 行の重複：SQLでは同一内容の行が複数回出現することが許されます。
• - 列の順序：SQLでは列の順序が重要であり、演算結果に影響を与えることがあります。
• - NULL値：SQLでは、NULLという特別な値が存在し、三値論理が採用されています。

整合性制約

関係データベースでは、データの整合性を保つために制約が使用されます。主キー制約、外部キー制約などがあります。これらの制約は、データの正確性を保証し、不整合なデータをデータベースに挿入することを防ぎます。

関係モデルの他のデータベースモデル

関係モデル以外にも、階層型データモデル、ネットワーク型データモデル、オブジェクト指向データモデルなどがあります。

階層型データモデル

データが親子関係を持つ木構造で表現されます。複雑な関係を表現するのが難しく、柔軟性に欠けます。

ネットワーク型データモデル

データ間の関係をより柔軟に表現できますが、複雑になりやすいという欠点があります。

オブジェクト指向データモデル

オブジェクト指向プログラミングの概念を取り入れたモデルです。複雑なデータ構造を扱うのに適していますが、関係データベースほど普及していません。

関係モデルの歴史

関係モデルは、1970年にエドガー・F・コッドによって提唱されました。それ以前は、階層型やネットワーク型のデータベースが主流でした。関係モデルの登場により、データ管理の理論的基盤が確立され、データベース技術の発展に大きく貢献しました。

データベース設計例

以下に、簡単なデータベース設計例を示します。

顧客テーブル

注文テーブル

注文明細テーブル

請求書テーブル

請求書明細テーブル

製品テーブル

これらのテーブルは、顧客、注文、製品などの情報を関係として表現しています。

まとめ

関係モデルは、データベース設計の基礎となる重要なモデルです。その概念を理解し、適切に活用することで、効率的で整合性のあるデータベースを構築することができます。SQLとの関連や、他のデータベースモデルとの比較を通じて、関係モデルの重要性を改めて認識できます。

参考文献

• - Codd, E. F. (1970). "A relational model of data for large shared data banks". Communications of the ACM, 13(6):377–387.
• - Date, C. J., Darwen, H. (2000). Foundation for Future Database Systems: The Third Manifesto, 2nd edition, Addison-Wesley Professional.
• - Date, C. J. (2003). Introduction to Database Systems. 8th edition, Addison-Wesley.
• - Date, C. J. ほか (1997)『データベースシステム概論 原著第6版』、1997年、丸善
• - Date, C. J. (2005). Database in Depth, 2005, O'Reilly Media, Inc
• - Date, C. J. ほか (2006)『データベース実践講義—エンジニアのためのリレーショナル理論』、2006年、オライリー・ジャパン

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